コンサルティングファームには、資料作成におけるいくつかのルールがある。
しかし、それらのルールは不文律であり、暗黙のルールになっていることが多い。
この記事は、これらの不文律を明文化し、基本原則としてまとめたものである。是非参考にして欲しい。
なお、資料作成に関して、下記のコンテンツも公開している。ぜひ見てほしい。
目次
資料構成のコツ
1スライド1メッセージになっている
1つのスライドに対して、言いたいことは1つに絞らなくてはいけない。
その言いたいことはキーメッセージと言われ、資料内で最も重要な部分である。
そして、キーメッセージ以外の情報はキーメッセージを証明するために存在する。
これは資料構成において最も重要な原則のため、必ず押さえなければならない。
メッセージのコツ
文字数は極力短くする
資料作成において文字数が多いことは理解を妨げる要因の一つである。
可能な限り、文字数を減らし、図やグラフで表現するべきである。
また、文字数を短くするため、「体言止め」を意識する。
冗長な文章を避ける
文章には非冗長性の原則というルールがある。スライド資料においても下記2点を意識するべきである。
①1つの文章内に同じ言葉及び意味を含めないようにする
②1つのスライド内に同じ言葉を使用することは極力避ける
非冗長性の原則は、資料作成だけでなく、ビジネス文書全般における一般的なルールのため、必ず覚えておきたい。
用語は統一する
資料全体において、用語は統一しなければならない。
読み手にとって、用語が統一されていないと、別の意味に捉えてしまう可能性が出る。例えば、略称を使う/使わないなども統一するべきである。
文章は左揃えにする
スライド資料は「左から右」「上から下」へと目線が動くのが通常である。つまり、読み手は左から右へ読み進めていくということだ。
そのため、文章は左揃えにしたほうが視認性は良く、統一感も出る。
キーメッセージは中央揃えにすることもあるが、それ以外の文章は基本的には左揃えにするべきである。
適切な位置で改行する
メッセージ作成においては、改行も意識するべきである。基本的には、「読み手にとって読みやすいか」を考えて、改行する。
改行においては、以下のルールを意識しよう。
改行1つで読みやすさが大きく変わる
ー 単語の途中で改行を入れてしまうと、とても読みにくくなります
ー 文章を徴収が読みやすい位置で改行するのは、箇条書きの基本です
ー 言い回しを工夫して、改行位置を調整しよう
書籍『一生使える見やすい資料のデザイン入門』より抜粋
箇条書きはインテンド機能を使う
これは、外資系コンサルファーム以外ではあまり意識されていないと思われるが、箇条書きにはインテンド機能を使う。インテンド機能を使うことで、箇条書きの設定をまとめて変更出来る。
インテンド機能を利用しないと、配置やポチなどを一つずつ修正しなくてはならないため、修正時間を考慮すると、結果的にインテンド機能を使ったほうが早いという結論になる。
フォントのコツ
フォントはシンプルにする
フォントは余計な装飾をせず、シンプルにするべきである。
フォントの装飾で利用して良いものは下記4点である。
- サイズ変更
- 色変更
- 太字
- 下線
フォントはMeiryo UIが原則
Meiryo UIはメイリオの派生フォントだ。
メイリオは「明瞭」という言葉が由来であり、視認性が良く、読みやすい。また、太字と細字の差がはっきりしており、強調箇所が分かりやすいのが特徴である。
そして、Meiryo UIは、メイリオよりも文字間隔が狭く、資料内により多くの文字数を入れることが可能である。
フォントを使い分ける
フォントは、Meiryo UIを原則にするべきと上述したが、状況によっては別のフォントを使うべきである。
少なくとも以下のフォントは押さえておきたい。
創英角ゴシック
創英角ゴシックは太いことが特徴である。
Meiryo UIよりも強い印象を与えるため、見出しや強調したい箇所に利用すると効果的である。
明朝体
明朝体の特徴は、美しさや高級感を表現できることだ。文字が細く、長文を書くときに最適なフォントである。
明朝体の中でも特におすすめなのが、「游明朝(ゆうみんちょう)」である。
游明朝体ファミリーは「時代小説が組めるような明朝体」をキーワードに、単行本や文庫などで小説を組むことを目的に開発した游明朝体 Rを核とした明朝体ファミリーです。
文字の大きさの揃った現代的な明るい漢字と、伝統的な字形を生かしたスタンダードな仮名の組み合わせは、これまでの明朝体とは違う、游明朝体の大きな特徴です。
note『「游」ってなに?|游明朝体と游ゴシック体』より引用
その他のフォントとして、下記も押さえておきたい。
- 数字や英文字:ArialもしくはSegoe UI
- Macの場合:ヒラギノ角ゴ
フォントサイズは12pt以上にする
フォントサイズは最低でも12pt以上にする。理由は下記2点である。
①12pt未満だと見づらいため
②資料の文字数を適切にするため
色の原則
色は3色以内に収める
外資系コンサルの説明資料では、あまり色を使わないのがルールである。この業界では、資料作成の教科書的存在である「外資系コンサルのスライド作成術(著:山口 周)」にも下記のように記載されている。
基本的にほとんどのスライドは、モノクロで100%の完成度までもっていけると考えてください。まず基本的に白と黒の2色で完結できること、そして「ここぞ」というところで「赤」等」のコントラストをつけるくらいに留めるように心がけて下さい。
外資系コンサルのスライド作成術
上記を踏まえると、スライド資料では白・黒・強調色の3色を使うべきということになる。
ただし、明度を変えて、使い分けることを推奨したい。具体的には下記3パターンで使い分ける。
●強調色(最も強い色)
●基本色(強調色の明度を半分にした色)
●極薄色(基本色の明度を半分にした色)
同じ色でも明度を分けることで、統一感を維持しつつもメリハリを出すことが可能となる。
装飾のコツ
装飾はシンプルにする
資料において最も重要な部分はキーメッセージである。
キーメッセージ以外の情報はキーメッセージを証明するために存在するのであり、余計な情報は不要である。
装飾は資料を分かりやすくために利用するべきで、それ以外のために利用するべきではない。
余計な装飾はせずにシンプルなデザインにするのが、資料作成のコツである。
整理の原則
同一グループの情報は囲み枠を使う
見やすい資料の特徴の一つとして、情報が構造化されていることが挙げられる。
情報が構造化されているということは、資料内の情報がどのグループに属しているかが一目で分かるということでもある。
つまり、情報のグループ化が重要であり、それを行うための最も基本的な手法が囲み枠を使うことである。
AのグループとBのグループを対比させたい場合、それぞれのAとBという囲み枠を2つ作ってしまい、その中に情報を書き込むようにする。それだけで、情報は整理される。
適度な余白を作る
資料作成に慣れている人は意図的に余白を使って、資料をデザインする。
YWCDのブログでは、余白の効果が体系的に整理されている。一部抜粋して紹介したい。
余白の効果とは?!
①情報の干渉緩和
②情報の区分け
③視線誘導
④紙面を印象づける
YWCDブログ「余白を制するものはデザインを制する。ホワイトスペースとの上手な付き合い方。」
上記をかみ砕いて説明すると、余白の効果は以下の通りである。
①見やすさが向上する
②情報がグループ化される
③読む順番をコントロールできる
④資料そのものに印象を与えることが出来る
ここで重要なことは、適度な余白を作ることである。余白は大きすぎても小さすぎても駄目で、計算して作るべきである。
上下左右を揃える
外資系コンサルでは、オブジェクトや文字などを上下左右に揃えることは当たり前のように行われる。
なお、物理的な体裁を整えるという意味で、外資系コンサルでは、下記を厳しくチェックされる。
- 上下左右を揃える
- 大きさを揃える
- 長さを揃える
- 感覚を揃える
これらは慣れてしまえば、すぐに終わる作業であるが、普段あまり資料作成をやらない人にとっては、時間がかかる作業だと思われる。
そのため、過度に気にする必要は無い。重要なことは資料の中身であり、見栄えを整えることは二の次である。そのことを忘れてはならない。
なお、位置を揃えるために、補助線の機能は必ず覚えておこう。
グリッド線:[Shift] + [F9]で表示/非表示
ガイド線:[Alt] + [F9]で表示/非表示
また、資料作成のスピードを早めたい人は、下記の記事を読むことを推奨したい。
【ブックマーク推奨】PowerPointを使う人が最初に設定するべき6つのこと【まとめ】資料作成のコツは伝えたい情報を絞り、シンプルにすること
今回、様々な資料作成のコツを紹介した。
一貫して言えるのは、資料の存在意義はメッセージを伝えることであり、そのメッセージが分かりやすく伝わるのが良い資料である。
余計な装飾や体裁に気を取られるのではなく、メッセージがきちんと正しく伝わるかという観点で資料作成をすることが重要だ。
なお、資料作成のルールを学べる本として、下記はよくまとまっており、おすすめである。是非参考にしてほしい。