目次
1.今回調査した中央省庁
国のブレーンと言われる中央省庁で働く国家公務員の実態はどうなっているのか。なかなか世間には表にならないリアルな実態を調査・比較してみた。まずは各省庁の残業時間を比較したい。(2022年4月時点 OpenWork参照)
以前と比べると全体的に残業時間は減ってきている。これは働き方改革の成果が表れた形だろう。
では、各省庁の実態について紹介していく。
1.財務省
平均残業時間
約36.7時間/月
組織文化
・上下関係が厳しく、トップダウン。幹部が決定したことを現場全員で支える文化。
・多くの人が公務員の人生を全うしようとするため、悪目立ちを避ける。
・キャリアとノンキャリアで大きな隔たりがあり、シニアなノンキャリアが若手のキャリアに気を遣うなどの場面に遭遇する。
・典型的な日本企業。究極の年功序列でウェットな職場環境。土日や定時後のイベントは実質強制参加となる。
・官尊民卑の文化の上、霞が関の中でも特権意識を持っている。唯我独尊で現状を変える気概は持っていない。
・報告過程が多く、審議官以上の幹部は説明のための時間を予約するのも大変。
・説明資料が紙媒体であったり、国会待機の時間があったりと生産性が低い場面も多い。攻めより守りの文化。
・転勤が多く、居住地を安定させたい人には不向き。
2.外務省
平均残業時間
約55.8時間/月
組織文化
・海外経験者ばかりのため、風通しが良い風土。上司は下を育てようという気概がある。
・職員は人柄がよく、親切でバランス感覚がある人が多い。
・仕事は基本的に組織(通常は課室単位)で行われる。そのため、個人の裁量はあまり無い。
・業務量が多いため、残業は常態化している。深夜まで残業が行われることも珍しくない。
・階級、学歴、職位などが人間関係に影響する。
・業務量が多いため、処理能力が高いことが求められる。
・在外公館勤務があり、家族ぐるみの濃密な人間関係の下で生きていくことが求められる。
・風通しは良いが、基本的には官僚独特の上意下達の文化。
外務省の実態を知るためのおススメ本
元外交官の佐藤優氏が外務省の裏側を書いたノンフィクション小説です。外務省について知るには必ず抑えておきたい1冊です。
3.経済産業省
平均残業時間
約62.3時間/月
組織文化
・部署によるが、若手は国会対応や予算当局との折衝により、長時間残業を強いられがちであり、調整の仕事が大部分を占める。
・風通しがよく自由闊達な議論が推奨されており、インパクトの大きい仕事も多くやる気のある若手にとっては成長できる職場。
・課長以上だと政治などの大きな流れを常に意識し、上に意見するのは難しくなる。
・他省と比較するとフラットな風土であり、課長補佐までであれば若手でもすんなりと意見が通る。
・思い付きのような施策や政治パフォーマンスでしかない案件対応も多く、携わる案件にやりがいを感じないことも多々ある。
・組織の多くの業務が、目的が不明確であり、あえて非効率にしているような業務もある。そのような仕事に職員が忙殺されている印象。
・自由闊達で仕事が出来る人は目立つ風土がある。また、個人プレーで仕事を進める人も多い。その分、組織的な動きは他省庁よりも弱い。
・派閥のようなものは無く、組織として公平に評価される雰囲気。
・通商産業省の頃から残業時間が長く、通常残業省と呼ばれていた時代もある。
4.警察庁
平均残業時間
約46.8時間/月
組織文化
・不毛な仕事が多く、特に国会対応では国会議員の対応によって、ほぼ全職員が無駄な残業を行っている。
・ことなかれ主義を徹底している。不祥事の原因究明などは大した調査も無く、曖昧な形で終わるのがほとんどである。
・基本的には年功序列であるが、昇任試験があるため、実力のある者が上へあがる組織である。
・年功序列で体育会系の雰囲気。トップダウンであり、上の人には逆らえない。
警察庁に関するおススメ本
警察庁長官狙撃事件は、なぜ解決できずに時効を迎えなければならなかったのか。濃厚な容疑を持つ人物が浮上していながら、なぜ、オウム真理教団の犯行に固執しなければならなかったのか。日本警察の宿命を説く第一線捜査官による待望の手記。
5.総務省
平均残業時間
約57.0時間/月
組織文化
・派閥があり、業務外の付き合いが多い。人事は不透明で、上司に気に入られないと希望ポストに就けない。
・局と部屋により、雰囲気はかなり異なる。部屋の雰囲気は課長次第。
・省庁再編により3つの省庁(総務庁、郵政省、自治省)が統合されているため、出身省庁により雰囲気も業務内容も異なる。
・職場の風通しは全般的に悪い。優秀な職員が仕事の出来ない職員をカバーするため、優秀な職員にしわ寄せがいく構造となっている。
・毎夏の異動時期には、職員全体の半数近くが異動するため、業務の継続性を保つことが難しく、モチベーション低下につながっている。
・トップダウンで体育会系の雰囲気。
・若手の飲み会では転職の話題が必ず上がるような状態になっている。
6.防衛省
平均残業時間
約43.3時間/月
組織文化
・完全なる縦組織で、上司が間違っていることが明らかでも基本服従しなければいけない。同じ駐屯地の中に複数の部隊が駐屯しており、部隊同士は仲が悪いことが多い。
・基本的には休憩時間や就業時間を順守しているため、働きやすい。
・年功序列であり、仕事ができない人でもある程度昇進する。
・同僚同士の団結を重んじる風土で、アットホームな雰囲気でもある。
・規律が厳しく、細かなルールを守って仕事をする必要がある。規則の変更には時間がかかるため、機動性を持てない環境。
・とにかく保守的で新しいことに挑戦する雰囲気は全くない。
防衛省に関するおススメ本
ネット財閥「アクトグループ」を標的とした連続爆弾テロ事件が発生。赤坂のビル地下、臨海副都心の巨大建設現場が爆破され、さらにサイバーテロも…。迷走する捜査、隠蔽される真実。公安のはみだし者、並河警部補は、防衛庁から出向した若い丹原三曹とたった2人で調査に乗り出すが、丹原はテロの実行犯「ローズダスト」のリーダーと面識があるらしい。テロ集団の正体は? 『亡国のイージス』の福井晴敏が、東京の心臓部を舞台に、史上最大級のスケールで描く力作長篇。
7.国土交通省
平均残業時間
約40.6時間/月
組織文化
・基本的に上司からの指示は絶対であり、上下間で建設的な議論になることは少ない。ただし、ここ数年で多少は改善されている。
・技術系が大きな権限を有している唯一の官庁。人事は事務系と技術系で分かれている。職員数も技術系のほうが占める割合が多い。
・3年以上同じ席にいることは不名誉だと考えており、業務の内容を考慮せず頻繁な異動が繰り返される。
・末端組織では、長く職場にいる人間が立場が強い。
・労働時間が長い人ほど評価される傾向にあり、生産性の観点はあまり見られない。
8.文部科学省
平均残業時間
約55.2時間/月
組織文化
・長時間働いても倒れない人が評価される。
・他省庁と比較して保守的な文化が強く、着実に目の前にある課題を解決していく人が合っている。基本的には前例踏襲。
・旧文部省系が保守的な文化なのに対して、旧科学技術庁系では積極的な傾向にある。
・他省庁と比較し、ガツガツした人は少なく、のんびりとした人が多い印象。そのため、他省庁や国会議員への対応にはあまり強くない。
・風通しはよく若手の意見もよく聞いてくれる。上下関係はしっかりしており、部下を厳しく育てる気風がある。
・教育委員会や学校からの出向者も多く、一体感に欠ける。
・中央省庁内での立場は低く、他省庁との調整では負けることが多い。
9.厚生労働省
平均残業時間
約40.8時間/月
組織文化
・風通しは悪く、縦横の連携が取りづらい。業務のノウハウが属人化している状態が見受けられ、その時の担当者によって対応力は異なる。
・それぞれ全く異なる仕事をしているため、自分で考えて判断することが求められる。引き継ぎを受けた後は前例や法令を調べ、自分で考えなくてはいけない。
・業務フローが非効率であり、人員が慢性的に不足している。その分、業務の偏りが大きく、求職者も多い。
・資料は文章ベースが多く、パワーポイントやエクセルのスキルよりも文章力が必要となる。
・様々なことがマニュアル化されており、それ通りに正確にこなしていくことが求められる。
10.農林水産省
平均残業時間
約44.6時間/月
組織文化
・風通しが悪く、意見が通りにくい。
・農業を扱っていることからスマートタイプよりも泥臭いキャラクターの人が入省する傾向にある。そのため、人間味のある職場になっている。
・全体的に温和な人が多いが、敵を作らないように馴れ合いになっているともいえる。
・社内改革は少なく、他の省庁に比べて遅れている部分も多い。
11.法務省
平均残業時間
約29.8時間/月
組織文化
・体育会系のような雰囲気ではなく、大人しく真面目な人が多い印象。
・現場を知らない政治家の一言により、無駄な予算がついてそれを執行する。
・法律を扱っていることから、何をするにしても根拠が求められる仕事。
・法務省の実権は検察が握っており、キャリア官僚の立場は低い。
法務省に関するおススメ本
12.環境省
平均残業時間
約46.1時間/月
組織文化
・仕事は民間委託や他省庁・自治体からの出向者任せで進めようとする。
・他省庁と比較すると、穏やかで保守的な雰囲気。
・風通しが良く、上司と部下の距離も近い。その反面、組織としては仕事をしないため、知識やノウハウは蓄積されない。
・新しい組織ということもあり、他の省庁と比較すると官僚的な側面は薄い。
・縦割り社会のため、部署間の連携は薄い。
2.各省庁の序列について
続いて、各省庁の序列について整理したい。
2-1.建制順
それぞれの省庁を建制順に並べると以下のようになる。
公文書においてあらかじめ決まっている組織の順番。特に省庁に使われることが多い。
1.内閣府
2.復興庁
3.総務省
4.法務省
5.外務省
6.財務省
7.文部科学省
8.厚生労働省
9.農林水産省
10.経済産業省
11.国土交通省
12.環境省
13.防衛省
2-2.入省の難易度順
続いて、入省の難易度順に整理する。権力が大きい省庁ほど、入省難易度が高い傾向にあり、優秀な人材が集まりやすい構造になっている。(あくまでも傾向である)
Sランク(最難関)
財務省、外務省
Aランク(難関)
警察庁、経済産業省、総務省(自治)
Bランク(普通)
厚生労働省、文部科学省、農林水産省、国土交通省、総務省(情報通信)、防衛省、金融庁、 公正取引委員会、総務省(行政管理)
Cランク(不人気)
環境省、法務省、国税庁、内閣府、会計検査院、人事院
なお、SランクとAランクの5つは、「5大省庁」と称される。それほど、難しく、エリートが集まった省庁だと言える。
なお、5大省庁に入省する8割程度は東大卒だと言われている。
3.「国家公務員(12の中央省庁)の実態を比較してみた。激務度は?組織文化は?」のまとめ
いかがでしたでしょうか。
各省庁それぞれ特徴はありますが、多くの省庁に共通しているのは、残業時間が長いこと、トップダウンで上からの指示が強いこと、横の連携(部署や省庁)が弱いところなどでしょうか。
優秀な人が多く集まっているため、無駄な仕事をなくし、もっと生産性を高めたいという意見も多いように感じました。
*各省庁のコメントはOpenWork等から抜粋しております。
↓↓応援クリックをポチッとお願いします!↓↓