こんにちは。わさおです。
近年は業務のシステム化にあたり、スクラッチ開発ではなくパッケージの導入を行う企業が増えてきました。システム企画から始まって、最終的に新システムが稼働するまでに行う作業は多岐にわたりますが、「初めてパッケージ導入に携わる」「スケジュールがどのようなイメージで進むのか分からない」という方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、パッケージ導入の一連の流れを8つのステップに分けて解説します。パッケージ導入未経験の方にとって、工程ごとのタスクや注意点がイメージできるようになることを目指しています。ぜひ最後まで読んでいただき、自社のシステム化やプロジェクト進行の参考にしてみてください。
目次
1. まずは、システム化計画から始めよう
最初に行うべきことは、システム化計画の企画立案です。ここでのポイントは「そもそも何のためにシステム化するのか」「システムにより解決したい課題は何か」を明確にすることです。具体的には以下のようなタスクを進めていきます。
- 企画書作成
システム化の目的・背景、期待効果、予算感や導入によるROIなどをまとめます。可能であれば、システム化のゴールや運用後のビジョンを定量・定性の両面で示すと、社内の理解を得やすくなります。 - 企画書の承認
作成した企画書を社内の上層部や関連部門にレビューしてもらい、承認を得ます。ここで承認を得られないと先に進めないため、念入りな根回しが重要です。 - RFP(Request For Proposal)の作成
RFPとはベンダーに対して提示する「こんなシステムを作ってほしい」「こんな要件を満たしてほしい」といった要望をまとめた文書です。
例えば、業務要件・機能要件・性能要件などを整理し、必要となるスケジュール、予算、契約上の条件や制限事項をまとめます。 - RFPの承認
RFPは後工程でベンダーを選定する際の基準になります。プロジェクトメンバーだけでなく、関連部門や利害関係者からのフィードバックを反映させて、正式に承認してもらいましょう。
システム化計画をしっかり作り込むことで、後工程のトラブルや手戻りを大幅に減らすことができます。「焦って導入に踏み切る」より、「どこをどう改善したいのか」を全社で共通認識にしておくことが重要です。
2. パッケージ選定は最も重要!!
企画書とRFPの承認を受けたら、次に行うのがパッケージ選定です。ここがプロジェクトの成否を左右すると言っても過言ではありません。なぜなら、導入するパッケージが自社の要件と合わないと、後々のカスタマイズに大きなコストや工数がかかり、場合によっては導入そのものが失敗に終わる可能性もあるからです。パッケージ選定の具体的な流れは下記のとおりです。
- 候補先ベンダーをリストアップ
RFP作成時の情報や同業他社の事例、IT情報サイトなどを参考にして、導入候補のパッケージベンダーをリスト化します。 - システム化の目的に照らし合わせて、ベンダーを絞る
システム導入で解決したい業務課題とベンダーの得意分野・実績を照合し、検討の優先度を決めます。業種特化型のパッケージか、汎用型のパッケージか、どこまで標準機能で対応できるかを丁寧にチェックしましょう。 - 厳選したベンダーにRFPを発行
絞り込んだベンダーに向けてRFPを発行します。ベンダー側はRFPの情報をもとに提案書を作成し、見積もりや導入スケジュール、対応体制などを提示してくれます。 - ベンダーの提案内容を評価・選定
ベンダーからの提案が出揃ったら、提示された機能・価格・導入期間・サポート体制などを評価表などで客観的に比較し、優先度を踏まえて総合的に判断します。
パッケージ選定時に見落としがちなのが、導入後の運用面やサポート体制の確認です。機能面や費用面はもちろん大切ですが、保守サポート、障害発生時の対応、アップデートのポリシーなどを具体的に確認しておくと、導入後のトラブルを防ぎやすくなります。
3. カスタマイズの有無で要件定義のボリュームは決まる
ベンダーが決まったら、次に行うのは要件定義です。パッケージ導入では「どの程度カスタマイズをするか」によって、要件定義の工数やボリュームが大きく変わります。パッケージの標準機能と現行業務をすり合わせるフィット&ギャップ分析を徹底的に行い、「標準機能で対応可能」「多少業務を変更すれば対応可能」「どうしてもカスタマイズが必要」といった判断を順番に下していきます。
要件定義の主な手順は以下のとおりです。
- プロジェクト計画書作成
プロジェクト全体の進め方や体制、マイルストーン、リスク管理方針などを記載します。プロジェクト計画書はメンバー全員が参照する“進行の軸”になります。 - プロジェクトキックオフ
チーム発足のタイミングでキックオフミーティングを行い、プロジェクトの目的・ゴール・体制・役割分担などを全員で共有します。プロジェクトメンバーのモチベーションを高める機会でもあります。 - フィット&ギャップ
システム化する業務プロセスを洗い出し、パッケージの標準機能で対応できるかどうかを確認します。ここで重要なのは、あくまでも「パッケージ側に業務を合わせる」スタンスを持つこと。すべてを現行業務に合わせようとすると、カスタマイズが膨れ上がります。 - 新業務フロー作成
フィット&ギャップの結果を踏まえて、パッケージ導入後の新業務フローを設計します。役割分担や業務手順が変わる場合は、関係部門との合意形成を早めに進めておきましょう。 - カスタマイズ要件整理
標準機能だけでは実現できない部分について、どのような機能拡張や改修が必要かを洗い出します。カスタマイズの範囲や優先順位、工数見積りをベンダーと連携しながら確定します。 - カスタマイズ機能選定
費用対効果やリスクを踏まえた上で、最終的にどの機能をどれだけカスタマイズするかを決定します。標準機能の活用を最大限にすることで、開発期間の短縮やコスト削減につながります。
4. 受入テスト開始までにマスターを準備しよう
要件定義が完了すると、次に進めるのがマスターデータの準備です。パッケージ導入の場合、商品マスターや取引先マスターなどの基本情報は、原則ユーザー企業側が主体となって整備する必要があります。
- マスター項目の定義
「どのようなマスターをどの粒度で用意するのか」「必須項目や属性項目は何か」を明確にします。既存システムやExcel管理で持っている情報がある場合は、移行時に重複や不足がないよう整理する必要があります。 - マスターデータの整合性チェック
不要データの削除や重複データの統合、入力ミス修正などを事前に行います。マスターデータが不十分だと、テストの際に余計なエラーが発生する原因になります。 - マスターデータ移行の計画
マスターデータをどのタイミングでパッケージ側に流し込むのか、移行ツールはどうするのかを決めます。テスト環境や本番環境でのデータ移行方法を確認し、業務に支障が出ないよう段取りを組みましょう。
このフェーズは地味に思われがちですが、ここで手を抜くと後々のテストや運用に大きな影響が出ます。テスト時に必要なデータを揃えておくことで、より実運用に近い形でシステム動作を確認できるようになります。
5. 受入テストはユーザー目線で確認するテスト
マスター準備が一段落したら、いよいよ受入テスト(ユーザー受入テスト)に進みます。スクラッチ開発でもパッケージ導入でも、テストの目的は「要件どおりに機能が実装されているか」「実際の業務で問題なく使えるか」を確認することです。パッケージ導入の受入テストでは、以下の点を重視しましょう。
- 実業務シナリオをベースにテストケースを作成
「実際にどのような手順でシステムを利用するのか」を念頭に置いてテストケースを作成すると、運用時に発生しやすい誤操作やイレギュラーケースも検証できます。 - ユーザー部門の担当者がテストを実施する
開発側だけでテストを行うと、業務上の視点が抜け落ちがちです。実際に業務を行うユーザーの目線でテストを行うことで、細かな使い勝手や画面遷移の不満点を洗い出しやすくなります。 - システムではなく業務を変える判断も大切
パッケージは変更しづらい部分も多いため、「どうしてもパッケージの仕様に合わない」箇所がある場合は、業務プロセスを変えるか、追加開発コストをかけてカスタマイズするかを検討する必要があります。コスト・リスク・効果を総合的に判断して最適解を導きましょう。
受入テストの出来具合は、導入後の定着度合いに直結します。ユーザーを巻き込みつつ、十分なテスト期間を確保することが大切です。
6. 実際の運用を見据えて、運用設計を行う
受入テストが完了したら、いよいよ運用設計に入ります。システム面だけでなく、運用体制やサポート窓口なども含めて総合的にデザインしていきましょう。具体的には以下のようなタスクがあります。
- 運用マニュアル作成
システムの画面操作手順はもちろん、業務の担当者がどのように連携して処理を進めるかなど、業務フローを踏まえたマニュアルを整備します。運用マニュアルは、運用開始後の定着や新入社員教育にも役立ちます。 - ユーザー教育
新システムに慣れていないユーザーが戸惑わないように、現場レベルでのトレーニングや説明会を実施します。早めに研修の計画を立てて、必要に応じてeラーニング教材や動画マニュアルを準備しておくと効果的です。
運用設計では、「システムがうまく動く」だけでなく、「人と組織がスムーズに動く」仕組みを作ることを意識するのがポイントです。特にパッケージの場合、機能の制約がある分、現行業務をどう変化させるかが成功の鍵となります。
7. 新システムを稼働させる準備に入ろう
運用設計の次は本番稼働に向けた準備を行います。ここでは以下のようなタスクが中心です。
- 移行データ作成
マスター以外の取引データや在庫データなど、運用に必要となるデータの移行を行います。移行対象となる期間やデータ品質のチェック方法、移行作業の担当・スケジュールなどを明確にしましょう。 - 稼働判定
移行作業や最終確認が問題なく完了したら、ステークホルダーから最終的な承認を得ます。「本番稼働してよい状態なのか」を冷静に判断し、万が一問題がある場合はスケジュールを調整してでも対処する姿勢が大切です。
このフェーズでは「いつから本稼働に切り替えるのか」を慎重に見極める必要があります。業務が停止してしまわないよう、関係部門との調整や周知が欠かせません。
8. 稼働後のトラブルを最小限に抑えるための配慮が必要
最後に、本番稼働後の運用定着を考えましょう。システムをリリースした直後は、ユーザーが慣れない環境で業務を行うため、どうしてもトラブルが起こりやすくなります。以下のような施策でトラブルを抑えつつ、運用を安定させる工夫をしましょう。
- 旧システムと新システムの並行稼働
一定期間は旧システムも残し、新システムが安定稼働するのを見極めながら移行する方法です。リスク分散の一方で、運用負荷が高まるというデメリットもあるので、どの期間並行稼働させるかは事前に慎重に検討してください。 - 初期流動管理
リリース直後は問い合わせが集中しやすいので、初動対応や問い合わせ対応の体制を強化します。プロジェクトメンバーやベンダーでサポートデスクを設置し、優先度の高い不具合に即対応できるようにしましょう。
パッケージ導入はスクラッチ開発に比べて短期間・低コストで実現できる面があるものの、導入後の定着には一定のケアが必要です。「導入して終わり」ではなく、「運用を軌道に乗せてからが本当のスタート」と考えるくらいの心構えが、失敗を減らすコツです。
まとめ
本記事では、パッケージ導入の一連の流れとスケジュールを8つのステップに分けて解説しました。企画段階から本番稼働後の運用に至るまで、どのような工程とタスクがあるのかを把握することで、よりスムーズな導入を実現できるはずです。
- システム化計画
企画書とRFPを整備し、目的や要件を社内外で共有 - パッケージ選定
複数ベンダーからの提案内容を比較検討し、自社に最適なパッケージを選定 - 要件定義
フィット&ギャップを重視しつつ、カスタマイズ範囲を最適化 - マスター準備
ユーザー側が主体となって必要データを整理・移行 - 受入テスト
実業務シナリオに基づき、ユーザー目線で機能と使い勝手を確認 - 運用設計
運用マニュアルやユーザー教育を通じ、組織体制を整備 - 本番稼働準備
移行データ作成・稼働判定をクリアして、リリースの段取りを固める - 稼働後のケア
並行稼働や初期流動管理でトラブルを最小限に抑え、運用定着を目指す
どんなに周到に準備をしても、システム導入には予期しないリスクやトラブルがつきものです。しかし、事前の計画や段取りをしっかり行うことで、そうしたリスクを最小限に抑えることができます。また、パッケージの標準機能を活用するのか、どの程度カスタマイズを加えるのかの判断は、導入全体のコストや期間に大きく影響します。ぜひ今回の記事を参考に、貴社のパッケージ導入を成功に導いていただければ幸いです。
もし導入プロセスのなかで不安や疑問が出てきた場合は、早めにプロジェクトメンバーやベンダーと相談しながら解決していきましょう。パッケージ導入のメリットを最大化し、より良い業務環境を作り上げることを応援しています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。次回は、プロジェクト計画書の書き方や進捗管理のポイントなど、より具体的なノウハウを紹介する予定です。気になる方はぜひチェックしてみてくださいね。