PMBOKが定めるプロジェクト管理の9つの知識エリアについて

プロジェクトマネジメントを学んだことがある人であれば、PMBOKという言葉を聞いたことがあると思う。

PMBOKは国際的に標準とされているプロジェクトマネジメントの知識体系である。ここではPMBOKの9つの知識分類を紹介したい。

1.プロジェクトマネジメントの目的

ポイント

・プロジェクトの推進と責任は業務側(ユーザー側)で持つ。

・コミュニケーションコストを可能な限り抑えること。

・下流工程ではプロジェクトメンバーだけではなく、関連部署も当事者として関わってくる。下記2点を行う。

 ①役割分担表で関係者の役割を明確にする。

 ②WBSで詳細なタスクスケジュールを明確にする。

・管理者も仕様理解をし、客観的な視点で担当者にアドバイスをする。

・ITコンサルタントは業務側、開発側のどちらかの立場に立つのではなく、プロジェクトの成功を最優先に考える。

・業務側、開発側ともに進捗をWBSで管理する。特に、開発側の設計・開発を定量的に管理する。

・開発側からの見積もり取得は出来る限り早急にする。

・チームの雰囲気を良くする。(聞きにくい空気を作らない)

2.プロジェクトマネジメントの9つの分類

米国プロジェクトマネジメント協会が体系化したPMBOK(Projcect Management Body Of Knowledge)によると、プロジェクトマネジメントは下記9つに分類される。

プロジェクト管理の9つの知識エリア


①統合マネジメント
②スコープマネジメント
③タイムマネジメント
④コストマネジメント
⑤品質マネジメント
⑥人的資源マネジメント
⑦コミュニケーションマネジメント
⑧リスクマネジメント
⑨調達マネジメント

「PMBOK 第6版」より

① 統合マネジメント

統合マネジメントの活動は主に下記2点

 ①他のマネジメント(スコープ、タイム、コストなど)を統合的に管理し、各プロセスを調整する

 ②プロジェクトにおける成果物が最新の状態を保つよう維持する。変更履歴管理やバージョン管理などが該当する。

② スコープマネジメント

プロジェクトが提供する成果物とそれを作成するための作業をスコープという。

WBSでプロジェクト全体を分解し、作業時間が見積もれるタスクまで落とし込み、スコープ管理を行う。

③ タイムマネジメント

プロジェクトには「始め」と「終わり」の期間が定められており、所定の期間内に完了させることが重要である。ガントチャートで作業内容と実施期間を見える化し、時間管理を行う。

なお、本サイトでは、WBSにガントチャートを組み合わせて活用することを推奨する。

ポイント

・管理するタスクの粒度が細かくなるほど、管理工数は増大する。プロジェクトの状況に応じて、最適な粒度でタスク管理を行う。

④ コストマネジメント

コスト見積手法

 ①ファンクションポイント法:ファイル数や画面数などから定量的に算出する方法。

 ②プログラムステップ法:LOCとも呼ばれる。開発するプログラムのステップ数を基に、開発規模を見積もる方式。開発者の能力に左右されることがある。

 ③類推見積法:WBSに基づいて、成果物単位や処理単位に工数を見積もり、ボトムアップ的に積み上げていく方法。

 ④COCOMO法:予想されるプログラム行数にエンジニアの能力や要求の信頼性などの補正係数を掛け合わせて開発工数や期間、要員や生産性を見積もり手法。自社における生産性のデータ収集が不可欠となる。

⑤ 品質マネジメント

品質マネジメントには、Quality ManagementとQuality Controlの2種類ある。

⑥ 人的資源マネジメント

外部の労働資源の活用方法

①派遣

②業務委託

 a)委任契約

 b)準委任契約

 c)請負契約

派遣と業務委託の違い

①派遣:派遣先企業の指揮命令を受けて仕事を行う。特に契約に定めない限り、プログラムの著作権の帰属先は、派遣先企業にある。労働者派遣法では、派遣期間は原則として最長3年である。

②業務委託:一定の業務を委託するもので、委託された受託者はある程度自由な裁量で業務遂行することが出来る契約形態。発注者側と業務委託を受けた側には雇用関係も指揮命令関係も無い。そのため、管理者の設置は必須となる。

業務委託契約の種類

業務を外部委託する際は下記のような業務委託契約がある。契約ごとの特徴を把握しておく必要がある。

①委任契約

②準委任契約

③請負契約

委任契約

一定の仕事を行うことを約束した契約。提供行為、報酬、費用負担などを定める必要がある。また、委任を受けた側は発注側に対して報告義務を負う。委任契約は法律行為を委託するときに締結する。

準委任契約

基本的には委任契約と同じだが、委託する内容が法律行為以外だと準委任契約になる。

請負契約

仕事を完成する契約。業務を行っただけではなく、発注側が求めた仕事の完成状態を納品する必要がある。基本的に、受託者の検収が完了しないと請求出来ない。
特に契約に定めない限り、開発されたプログラムの著作権は受託側に帰属する。また、多くの場合、受託側は瑕疵担保責任を負う。

⑦ コミュニケーションマネジメント

コミュニケーションマネジメントは計画、実行、監視・コントロールプロセスに分かれている。

⑧ リスクマネジメント

リスクアセスメントとリスク対応の2つから成る。

⑨ 調達マネジメント

調達マネジメントは下記6つのプロセスで成り立つ。

 ①調達計画

 ②引き合い計画

 ③引き合い

 ④発注先選定

 ⑤契約管理

 ⑥契約完了

3.プロジェクトマネジメントで利用するツール

3-1.WBS

WBSはプロジェクトマネジメントで利用する最も基本的なツールである。ただし、運用方法を誤ると、全く意味を成さないツールになる。WBSの扱いを雑にしないことは良いプロジェクトマネージャーの条件の一つである。

なお、WBSの作成方法は下記の記事を参考にして欲しい。

【入門編】WBSをエクセルで作成する方法について解説します

3-2.マスタースケジュール

規模が大きいプロジェクトにおいてはマスタースケジュールの作成は必須である。見やすくて分かりやすいマスタースケジュールはプロジェクトの進行を円滑にする。

なお、マスタースケジュールの作成方法は下記の記事を参考にして欲しい。

プロマネ初心者でも出来るマスタースケジュールの作成方法【サンプルあり】

3-3.課題管理表

プロジェクトの課題は可視化することが重要である。課題管理表は、プロジェクト内に共有するべきである。

4.まとめ

プロジェクトマネジメントにおいて、PMBOKを習得することは非常に重要です。

知識と経験を積み上げて、質の高いプロジェクトマネジャーを目指していきましょう。