OpenStackとは何か、オワコンと言われている理由や構築手順含めて解説します

こんにちは。ITコンサルタントのわさおです。

この記事では、そもそも OpenStack 何か、何故オワコンと言われているのか、具体的な構築手順はどうするのかについて解説します。


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1. はじめに

クラウドネイティブの潮流が進む現代、仮想化技術やコンテナ技術はビジネスやサービスのインフラ基盤に欠かせないものとなりました。その中で、オープンソースのプライベートクラウド基盤を実現するフレームワークとして長年注目を集めてきたのが OpenStack です

しかし近年、「OpenStack はオワコン(終わったコンテンツ)なのではないか」という声を耳にすることもあります。理由としては、パブリッククラウド(AWS, Azure, GCP など)の圧倒的な普及や、コンテナオーケストレーション技術(Kubernetes)へ注目が集まることによるシェアの奪取が挙げられます。

本記事では、まず OpenStack とは何か を改めて整理したうえで、「OpenStack は本当にオワコンなのか?」という論点を解説し、そのうえで実際の構築手順や運用時のポイントに触れていきます。

OpenStack に興味がある方、あるいは「学んでみたいけれど、本当に今から勉強する価値はあるの?」と疑問をお持ちの方の参考になれば幸いです。


2. OpenStack とは何か?

OpenStack は、仮想マシンやネットワーク、ストレージなど、複数のインフラ要素をオープンソースで統合的に管理するためのプラットフォームです。

オープンソースのクラウドOS(Operating System)」と呼ばれることもあります。その最大の特徴は、大規模なコミュニティと多彩なコンポーネント によって支えられている点にあります。

オープンソースであることの意味

OpenStack は 2010 年に Rackspace と NASA(米航空宇宙局)の共同プロジェクトとして始まりました。以来、多くの企業や開発者がコミュニティに参加し、各サービスのコードが公開・開発され続けています。

オープンソースであることによって、誰でもソースコードを閲覧・変更・拡張できるため、自社や自組織の要件に合わせた高度なカスタマイズが可能です。

また、特定ベンダーへの依存を避けることができるため、大規模インフラを扱うエンタープライズや公共機関にとっても魅力的な選択肢になっています。

IaaS(Infrastructure as a Service)を自前で実現

OpenStack は、IaaS (Infrastructure as a Service) 形式のクラウド基盤をオンプレミスやホスティング環境に構築するためのフレームワークです。

たとえば Amazon EC2 や Microsoft Azure Virtual Machines のような仮想マシン・ネットワーク管理機能を、自前のデータセンターに構築できるイメージを持っていただくとわかりやすいでしょう。

多様なコンポーネントの集まり

OpenStack は単一のソフトウェアではなく、複数のプロジェクトの集合体です。コンピュート(Nova)、ネットワーク(Neutron)、ストレージ(Cinder, Swift など)、イメージ管理(Glance)、認証(Keystone)など、それぞれの機能を独立したコンポーネント(サービス)として提供し、組み合わせてクラウドインフラを構成します。

多様なユースケース

プライベートクラウドを安価に構築したい企業

・金融や医療など高いセキュリティ要件を満たしつつクラウド化したい組織

・パブリッククラウドと併用してハイブリッドクラウドを組みたい事業者

こうした要件を持つ企業・組織にとって、OpenStack は有力な選択肢となっています。一方で、構築と運用には相応の知識と学習コストが必要であり、そこが導入ハードルになっている側面も否定できません

3. 「OpenStack = オワコン」論の背景

OpenStack は一時期「クラウド基盤といえばこれ」というくらい話題となりましたが、ここ数年は「オワコン」という評判も耳にするようになりました。その背景には以下のような要因があります。

3.1 パブリッククラウドの台頭

AWS や Azure、GCP などのパブリッククラウドが、シンプルな料金体系と豊富なマネージドサービスを武器に市場を急拡大してきました。企業としても、データセンターを自前で運用するよりも、既に整った巨大インフラを利用したほうがコスト面・スピード面で有利なケースが増えています。
その結果、「わざわざオンプレミスで OpenStack を構築しなくてもパブリッククラウドで十分では?」という判断が下されやすくなりました

3.2 コンテナ技術(Kubernetes)の普及

Docker などのコンテナ技術が大きく進展し、さらに Kubernetes に代表されるコンテナオーケストレーション技術が広く定着してきました。

多くのサービスをコンテナでデプロイ・管理する手法は、仮想マシンベースよりも軽量かつスケーラブルだと考えられています
そのため、インフラ層の構築においては OpenStack よりも Kubernetes + コンテナ を中心に据えた環境が好まれるケースも増えているわけです。

3.3 複雑な構成・学習コストの高さ

OpenStack は複数のコンポーネントから成り立ち、それぞれ独立したサービスとして動くため、構築と運用に伴う学習コストが高い ことも事実です。

ちょっとしたテスト環境を作るだけなら DevStack やパッケージ化されたディストリビューションを活用できますが、本番運用レベルでマルチノードを冗長化しながら運用するとなると、相応に難易度が上がります

4. それでも OpenStack が選ばれる理由

こうした背景から「オワコン」と囁かれる OpenStack ですが、実際には現在も大規模環境やセキュリティ要件の厳しい現場などで根強い需要があります。以下のような特性が、その理由を裏付けています。

  1. オープンソースによるカスタマイズ性
    オープンソースであるため、ソースコードレベルで自由に拡張・変更が可能です。オンプレミスやプライベートクラウドで独自要件を満たす必要がある場合、大幅なカスタマイズが必要となることが多く、ここでベンダーロックインがない点は大きな魅力です。
  2. 大規模コミュニティと開発体制
    世界中の企業・開発者が参加するコミュニティは依然として大きく、OpenStack Foundation(現在は OpenInfra Foundation)の下での開発やサポートが続いています。ベンダー各社も独自にサポートやディストリビューションを提供しており、全体としてのエコシステムはまだ衰退していません。
  3. 厳格なデータガバナンス要件への対応
    特に金融、公共セクター、医療などは、データを社外や海外のクラウドに置くことが規制上難しいこともあります。オンプレミスにサーバーを置きながらクラウドのような柔軟性を実現できる OpenStack は、こうした業界でのニーズが高いです。
  4. ハイブリッドクラウドとの親和性
    パブリッククラウドだけに依存するのではなく、自前のリソースと組み合わせて柔軟に運用するハイブリッドクラウド戦略が注目されています。オンプレミス側の基盤として OpenStack を利用し、必要に応じてパブリッククラウドと連携させることで、より柔軟なシステム構成を実現できます。

5. OpenStack の主なコンポーネント

OpenStack は大きく分けると以下の主要コンポーネントによって成り立っています。

  1. Nova(Compute)
    仮想マシンのライフサイクルを管理するコンポーネント。インスタンスの起動・停止、スケジューリングなどを担当。
  2. Neutron(Networking)
    仮想ネットワークやロードバランサ、ファイアウォールなど、ネットワーク関連の機能を担います。
  3. Cinder(Block Storage)
    仮想マシンにアタッチするブロックストレージサービス。LVM, iSCSI, Ceph などをバックエンドとして利用可能。
  4. Glance(イメージ管理)
    OS イメージの登録・取得を行うサービス。仮想マシン用のイメージデータを一元的に管理します。
  5. Keystone(認証・認可)
    OpenStack 全体の認証基盤。ユーザの認証やトークンの発行、ロールベースのアクセス制御などを担います。
  6. Horizon(ダッシュボード)
    Web ベースの管理画面を提供。GUI で各種操作ができるので、初心者にもわかりやすい。
  7. Heat(Orchestration)
    YAML などで記述されたテンプレートをもとに、Compute, Network, Storage などのリソースを一括管理・自動展開。

ほかにも Swift(オブジェクトストレージ)Ceilometer(メトリクス収集)Magnum(コンテナオーケストレーション連携) など多くのコンポーネントが存在します。必要なものだけを組み合わせ、不要なものはインストールしないといった柔軟な選択が可能です。

6. OpenStack を構築するには?

OpenStack の構築手順は、一言で言うと「多くのコンポーネントを整合性を保ちながら導入する」ことが肝要です。ここでは代表的な手法として DevStack を用いたシングルノード構成と、本番運用を想定したマルチノード構成をざっくりとご紹介します。

6.1 構築前の準備

  1. ホスト OS の選定
    Ubuntu や CentOS(Rocky Linux, AlmaLinux など)を用いるのが一般的。公式ドキュメントにもこれらを前提とした手順が用意されています。
  2. ハードウェアリソース
    テスト用ならそこまで高スペックでなくても動きますが、本番運用を想定するなら CPU / メモリ / ストレージに余裕を持ったマシンが必要です。
  3. ネットワーク設計
    単一ノード構成でも外部ネットワークや管理ネットワークをどう振り分けるかを考えておく必要があります。マルチノードの場合はさらに複雑になるので、事前にトポロジを設計しましょう。

6.2 All-in-One ノードでのインストール手順 (DevStack)

DevStack は学習目的や開発テスト用に、シングルノードで簡単に OpenStack 環境を構築できるスクリプト集です。本番運用には向きませんが、OpenStack を手早く試したい場合には最適です。以下は Ubuntu 22.04 LTS を例にした大まかな手順です。

  1. パッケージのアップデートと必要ツールの導入bashコピーするsudo apt-get update && sudo apt-get upgrade -y sudo apt-get install -y git vim curl wget
  2. stack ユーザの作成bashコピーするsudo useradd -s /bin/bash -d /opt/stack -m stack sudo passwd stack # パスワード設定 sudo usermod -aG sudo stack
  3. DevStack のクローンbashコピーするsu - stack git clone https://opendev.org/openstack/devstack.git cd devstack
  4. local.conf の設定iniコピーする[[local|localrc]] ADMIN_PASSWORD=admin DATABASE_PASSWORD=admin RABBIT_PASSWORD=admin SERVICE_PASSWORD=admin HOST_IP=192.168.0.10 # 実際のIPアドレスに合わせる # 有効化するサービスを指定(例) ENABLE_SERVICE=horizon ENABLE_SERVICE=g-api ENABLE_SERVICE=g-reg ENABLE_SERVICE=n-api ENABLE_SERVICE=n-cpu ENABLE_SERVICE=n-sch ENABLE_SERVICE=n-crt ENABLE_SERVICE=n-obj ENABLE_SERVICE=n-cond ENABLE_SERVICE=n-novnc
  5. スクリプトの実行bashコピーする./stack.sh 数十分ほどかけて依存関係や各種コンポーネントがインストールされます。完了後、ダッシュボード(Horizon)の URL とログイン情報が表示されるので、ブラウザでアクセスして確認します。

6.3 マルチノード構成の構築

本番運用 を見据えた大規模な構成では、OpenStack の各コンポーネントを複数のサーバーに分散します。たとえば、コントローラノード・ネットワークノード・コンピュートノードといった役割分担を行い、それぞれにコンポーネントをインストールし設定を行っていきます。

公式のドキュメンテーションに沿って進めるのが王道で、典型的には以下のステップを順に行います。

  1. Keystone(認証) のインストール
  2. Glance(イメージ管理) のインストール
  3. Nova(Compute) のインストール(コントローラノード、コンピュートノード双方)
  4. Neutron(Networking) のインストール(コントローラ、ネットワークノードなど)
  5. Cinder(Block Storage) のインストールと設定
  6. Horizon(ダッシュボード) のインストールと設定
  7. Heat(Orchestration) や Swift(オブジェクトストレージ)などオプション機能の導入

各ステップでデータベース接続設定やサービス間のエンドポイント登録など、細かい構成ファイルの編集が必要となります。初めての構築では手順通りに進めてもつまずく部分が出てくると思いますが、コマンドラインのエラーメッセージやログファイル(たとえば /var/log/ 以下の各種ログ)を根気よく追いかけながら原因を特定し、修正していくことが重要です。

7. 運用のポイント

OpenStack を運用する上で注意すべき主なポイントは以下のとおりです。

  1. アップグレード戦略
    OpenStack は半年〜1 年ごとにリリースが行われ、コードネームが付与されています(Nova, Ocata, Pike, Queens, Rocky, Stein, Train, Ussuri, Victoria, Wallaby, Xena, Yoga, Zed…)。アップグレード時には互換性の問題やデータベーススキーマの変更が発生するため、公式ドキュメントを参照しながら計画的に行う必要があります。
  2. ネットワーク障害への対処
    Neutron(Networking)は柔軟性の高さゆえに設定も複雑で、仮想ネットワークや外部ネットワークの設定を間違えるとトラブルシューティングが大変です。環境をよく理解し、トポロジを可視化しておくことが重要です。
  3. ログ管理とモニタリング
    各コンポーネントが別々のサービスとして動作しているため、障害時には複数のログを突き合わせる必要があります。Elasticsearch + Kibana などのログ集中管理システムや、Prometheus + Grafana などのモニタリングツールを導入しておくと、障害の早期発見と根本原因の調査がしやすくなります。
  4. セキュリティ対策
    プライベートクラウドといっても外部と連携する部分が必ずあります。Keystone の認証設定や API アクセス制御、ホストレベルのファイアウォール設定などはしっかり行いましょう。また、CVE(脆弱性情報)なども定期的にチェックし、必要なパッチを適用する姿勢が重要です。

8. OpenStack は本当にオワコンなのか?

ここまで見てきたように、確かに OpenStack が「全盛期の熱狂的なブームからは落ち着いた」のは事実です。パブリッククラウドやコンテナ技術の進化に押されてシェアを奪われている側面もあります。しかし、

  • オンプレミス環境で高度なカスタマイズが必要なユースケース
  • 法規制やセキュリティ要件でパブリッククラウドが使えない業界
  • ハイブリッドクラウド戦略の一環としてオンプレミスリソースを効率的に活用したい企業

など、一定の需要が依然として残っています。また、OpenStack は大型コミュニティがいまだ健在で、改良や新機能の追加も継続的に行われているため、「完全に終わった技術」ではありません

OpenStack は確かに学習コストが高いですが、その分 柔軟な制御と拡張が可能 であり、パブリッククラウドへ完全移行できない企業・組織にとってはむしろ重要な選択肢となります。また、OpenStack 上で Kubernetes クラスターを動かすなど、コンテナとの共存という新たな利用パターンも進化してきています。

9. まとめ

本記事では、OpenStack とは何か という基礎的な解説から、「オワコンなのか?」という議論の背景、実際の構築手順や運用時のポイントまでを包括的にご紹介しました。ポイントを振り返ると、以下の通りです。

  1. OpenStack とは何か?
    • オープンソースのクラウド OS であり、複数のコンポーネントによって仮想マシンやネットワーク、ストレージを包括的に管理できる
    • NASA と Rackspace によって始まり、現在も多くの企業・開発者が参加する巨大コミュニティを形成
  2. OpenStack がオワコンと言われる背景
    • パブリッククラウド(AWS, Azure, GCP)の台頭
    • Docker, Kubernetes などのコンテナ技術の躍進
    • 構築・運用コストの高さ
  3. それでも選ばれる理由
    • オープンソースによる高いカスタマイズ性・拡張性
    • 大規模コミュニティと商用ディストリビューションの存在
    • セキュリティ要件が厳しい業界でのオンプレミス需要
    • ハイブリッドクラウド戦略との親和性
  4. 構築の概要
    • DevStack を使った単一ノード(All-in-One)の簡易構築
    • 公式ドキュメントに沿ったマルチノード構成(本番環境)
    • ネットワーク設計や各種コンフィグファイルの整合性が肝要
  5. 運用のポイント
    • リリースごとのアップグレード手順への注意
    • Neutron(Networking)の複雑さへの備え
    • ログ管理・モニタリングシステムの導入
    • セキュリティアップデートやパッチ適用を欠かさない
  6. 本当にオワコンなのか?
    • 一部の潮流には押されているが、決して終わった技術ではない
    • 大規模オンプレミスや特殊要件を伴う環境では依然として強い需要がある
    • コンテナやパブリッククラウドとの連携・共存による新しい形での活用も広がっている

結論として、OpenStack はまだまだ現役であり、特定の領域やユースケースで強力に機能する技術 です。「オワコン」と一蹴するのではなく、自社のサービス・インフラ要件と照らし合わせて、本当に合うかどうかを慎重に検討してみるのが賢明でしょう。特にプライベートクラウドを必要とする大規模環境では学習コストが見合うだけのリターンが見込めるはずです。

もし今から OpenStack を学び始めるなら、まずは DevStack を使って気軽に環境を構築し、各コンポーネントの役割や連携方法に慣れることをおすすめします。その後、必要に応じて複数ノードを使った本格的な構築に挑戦してみると、運用上のノウハウやトラブルシューティングの勘所が身につくでしょう。コミュニティフォーラムや Slack、ユーザ会などで情報を共有しながら進めると、よりスムーズに学習を進められます。