MacOSでLinux環境を仮想的に構築する方法を解説します

macOS上でLinux環境を仮想的に構築する方法はいくつかあります。代表的なものとして、以下のような仮想化ソフトウェアが挙げられます。

  • VirtualBox(無料・オープンソース)
  • VMware Fusion(有料だが個人利用で無料枠あり)
  • Parallels Desktop(有料)
  • UTM(Apple Silicon向けに比較的使いやすい無料ツール)

また、近年はIntel MacとApple Silicon(M1/M2など) Macで対応状況が異なります。ここでは代表的なソフトウェアごとに概要と手順を説明します。

ちなみに私個人的にはMac miniを推しております。デスクトップとは思えない小ささとオシャレさなので気に入っております。

1. Intel Macの場合

1-1. VirtualBoxを使う場合

概要

  • オラクル(Oracle)が提供している無料の仮想化ソフトウェア
  • Intel Macであれば比較的安定して動作する
  • オープンソースかつ無料で利用できる

インストール手順

  1. VirtualBoxのダウンロード・インストール
    • 公式サイト( https://www.virtualbox.org/ )からMac向けのインストーラをダウンロードし、インストールします。
    • macOSの「セキュリティとプライバシー」設定で拡張機能の許可を求められることがあります。その場合は許可を行ってください。
  2. LinuxディストリビューションのISOイメージを入手
    • UbuntuやDebian、Fedoraなど任意のディストリビューションのISOイメージを公式サイトからダウンロードします。
    • 例: Ubuntu公式サイト( https://ubuntu.com/download )
  3. 新規仮想マシンの作成
    • VirtualBoxを起動し、「新規」ボタンをクリックします。
    • 名前やタイプ(Linux)、バージョン(UbuntuならUbuntu、その他のディストリビューションなら近いバージョン)を選択します。
    • メモリサイズ、仮想ハードディスクの容量など必要に応じて設定します。
  4. 仮想マシンの設定
    • 作成した仮想マシンを選択し「設定」をクリックします。
    • 「ストレージ」タブなどで、ダウンロードしたISOファイルを仮想CD/DVDドライブとしてマウントします。
    • ネットワークアダプタの設定(通常はNATかブリッジを選択)など、必要に応じて調整します。
  5. Linuxのインストール
    • 仮想マシンを起動すると、ISOイメージからブートが始まります。
    • ディストリビューションごとのインストールガイドに従ってインストールします。
    • インストール完了後、仮想マシンを再起動し、ISOイメージを取り外して起動確認をします。
  6. Guest Additions(ゲスト追加機能)のインストール
    • VirtualBoxのメニューから「Guest Additions CDイメージの挿入」を実行します。
    • Linux上でマウントし、インストールスクリプトを実行することで、マウスのキャプチャ解放や画面解像度の自動調整などが可能になります。

1-2. VMware Fusionを使う場合

概要

  • VMware社が提供する仮想化ソフトウェア
  • 個人の非商用利用であれば無料の「Fusion Player」が利用可能(商用利用は有償ライセンス)
  • 操作画面や機能が分かりやすく、WindowsやLinuxなどのゲストをまとめて管理しやすい

インストール手順

  1. VMware Fusion Playerのダウンロード
    • VMware公式サイトから最新版をダウンロードし、インストールします。
  2. ライセンスの取得(無料版の場合)
    • VMwareのサイトでアカウントを作成し、無料ライセンスキーを取得します。
    • インストール時にキーを登録します。
  3. LinuxディストリビューションのISOイメージを入手
    • VirtualBoxの場合と同様に、UbuntuやDebianなどのISOを取得します。
  4. 新規仮想マシンの作成
    • VMware Fusionを起動し、「新規」→「インストールディスクまたはイメージから」を選択します。
    • ダウンロードしたISOを指定し、画面の指示に従ってインストールウィザードを進めます。
  5. Linuxのインストール
    • ディストリビューションごとの手順に従ってインストールします。
    • インストール後、必要に応じてVMware Toolsをインストールすると、ホストとゲスト間のファイル共有や解像度の自動調整が有効になります。

1-3. Parallels Desktopを使う場合

概要

  • macOS向けの仮想化ソフトウェアとしては歴史が長い製品
  • 有料ソフトだが、操作が簡単で高いパフォーマンスを得やすい
  • Windows仮想化の使い勝手が優れていますが、Linuxも問題なく動作します

インストール手順

  1. Parallels Desktopのダウンロード
    • Parallels公式サイトから試用版または購入してダウンロードします。
    • インストール後、ライセンスの登録を行います。
  2. LinuxディストリビューションのISOイメージを入手
    • 公式サイトからISOイメージを取得。
  3. 新規仮想マシンの作成
    • Parallels Desktopを起動し、「新規仮想マシンを作成」からISOを選択してウィザードを進めます。
    • メモリやCPUコア数などを指定し、インストールを開始します。
  4. Linuxのインストール
    • 表示されるガイドに従ってインストールします。
    • その後、Parallels Tools(追加機能)をインストールすると、解像度変更やクリップボード共有などができます。

2. Apple Silicon(M1/M2) Macの場合

Apple Silicon搭載Macでは、従来のIntel向け仮想化ソフトウェアと動作条件が異なります。以下の点に注意が必要です。

  • Apple Silicon向けの仮想マシンは「ARMアーキテクチャ」版のLinuxをインストールする必要があります。
  • 2025年初頭時点で、Intel/AMD向けのx86_64アーキテクチャ版LinuxをApple Silicon上で完全にエミュレーションするには、UTMなどのソフトウェアが必要になります。パフォーマンスはネイティブ動作より落ちます。
  • VMware FusionはApple Silicon対応版がテックプレビュー版から正式版へと段階的に移行中です。
  • Parallels DesktopはApple Siliconを正式サポートしており、対応したLinuxディストリビューション(ARM版)を用意する必要があります。

2-1. UTMを使う場合 (無料)

概要

  • Apple Silicon向けに比較的使いやすい無料の仮想化・エミュレーションソフト
  • x86_64 (Intel)環境をエミュレートするモードと、ARMネイティブ環境で仮想化するモードがある

ARM版Linuxをネイティブで動かす場合

  1. UTMのダウンロード・インストール
    • 公式サイトやMac App Store(有料版)からUTMを入手します。
    • GitHubのリリースページ( https://github.com/utmapp/UTM )からも無料でダウンロード可能です。
  2. ARM版ディストリビューションのイメージ入手
    • Ubuntu公式はRaspberry Pi向けイメージなどのARM版を提供しています。
    • FedoraやDebianなどもARM版イメージを提供している場合があります。
  3. UTMで仮想マシンを新規作成
    • 「Create a New Virtual Machine」をクリックし、OSの種類(ARM/Intel)や利用したいイメージを選択します。
    • CPUやメモリ、ストレージを割り当てます。
  4. Linuxのインストール
    • 画面の手順に従ってインストールを進め、再起動して完了です。

x86_64版Linuxをエミュレートする場合

  • ARM版がないディストリビューションをどうしても使いたいときは、UTMの「Emulation (QEMU)」モードを使うことで可能です。
  • ただしエミュレーションはネイティブ仮想化よりパフォーマンスが大きく低下する点に注意が必要です。

2-2. Parallels Desktop (Apple Silicon対応)

  1. Parallels Desktopのダウンロード・インストール
    • Apple Silicon向けにネイティブ対応しているため、公式サイトから最新版をダウンロードします。
    • ライセンスの登録を行います。
  2. ARM版Linuxディストリビューションを入手
    • Parallels上でUbuntuなどをインストールする場合は、Parallels側のウィザードから自動でダウンロードできる場合もあります。
    • もしくは、公式サイトでARM版ISOをダウンロードし、手動でインストールします。
  3. 新規仮想マシンの作成
    • Parallelsを起動し、新規仮想マシン作成画面で「Linux」を選択。
    • ARM版のISOを指示に従って読み込み、インストールを開始します。
  4. ゲスト追加機能のインストール
    • Parallels Toolsをインストールして、ファイル共有やマウス動作の最適化を行います。

2-3. VMware Fusion (Apple Silicon対応版)

  • 2025年時点では正式版とテックプレビュー版が混在している可能性があります。最新情報はVMware公式サイトを参照してください。
  • 手順はIntel版とほぼ同じですが、ARM版ディストリビューションを使う必要があります。

3. その他の選択肢:Docker/コンテナの利用

もしGUIアプリの実行ではなく、コマンドライン中心でLinux環境を利用したい場合は、Dockerを使う方法もあります。Dockerは仮想マシンというよりはコンテナ技術ですが、環境の再現性が高く、軽量です。ただしDockerコンテナはホストOSとカーネルを共有するため、GUIの利用やホストOSのアーキテクチャ差異(Apple Silicon vs x86_64)などで制限が出る場合があります。

  1. Docker Desktopのダウンロード・インストール
    • macOS向けのDocker Desktopをインストールします。
  2. イメージの取得とコンテナ起動
    • docker pull ubuntu:latest などでイメージをダウンロードし、
    • docker run -it ubuntu /bin/bash のようにしてコンテナ上でLinux環境を使用します。

ただしあくまで軽量コンテナ環境なので、「完全な仮想マシンの代替」としては機能が限定される点に注意が必要です。


4. まとめ

  1. Intel Macの場合は、VirtualBoxやVMware Fusion Player(個人利用無料)、Parallels Desktopなどを利用すると手軽にLinux環境を構築できます。
  2. Apple Silicon Macの場合は、ARM版ディストリビューションが必要となり、利用できる仮想化ソフトも限定されます。ネイティブ仮想化を行う場合はUTM(仮想化モード)やParallels Desktop、VMware Fusion (Apple Silicon対応) を使用するとスムーズに動作します。x86_64版Linuxを無理にエミュレートする場合はUTMのQEMUエミュレーションなどを利用できますがパフォーマンス低下に注意が必要です。
  3. シンプルにコマンドライン中心でよければDockerコンテナを利用するのも一つの手段です。

これらの仮想化環境を使えば、macOS上に好きなLinuxディストリビューションを構築し、ソフトウェアの開発・テストや実行環境として活用できます。目的とMacのアーキテクチャ(IntelかApple Siliconか)に合わせて適した方法を選択してください。