ITエンジニアは、専門分野ごとに異なる役割やスキルが求められます。
本記事では、ITエンジニアを「開発系」「インフラ系」「プロジェクト管理系」「AI・データ分析系」「運用系」の5つのカテゴリに分類し、それぞれのカテゴリに属する20種類の職種について、想定年収も含めて解説します。
1.アーキテクト系エンジニア
アーキテクト系エンジニアは、システムやアプリケーションの全体設計を担い、プロジェクト全体の成功を技術面から支える重要な役割を果たします。
1-1.ソリューションアーキテクト
目的:顧客の課題に応じた技術的ソリューションを設計。
役割:システムの要件を分析し、適切な技術スタックやインフラ設計を提案します。複数のシステムやサービスを統合する際の技術選定や全体構成を担います。
必要なスキル:AWS、Azure、GCP、システム設計、プレゼンテーション能力。
想定年収:700万円〜1,500万円。
1-2.クラウドアーキテクト
目的:クラウドインフラの設計と最適化。
役割:クラウドベースのシステム設計を担当し、コスト効率やスケーラビリティを考慮したインフラを構築します。企業のオンプレミスからクラウドへの移行プロジェクトをリードすることも多いです。
必要なスキル:クラウドサービスの深い知識(AWS、Azure、GCP)、IaC(Infrastructure as Code)、セキュリティ知識。
想定年収:800万円〜1,600万円。
1-3.ITストラテジスト(エンタープライズアーキテクト)
目的:企業全体のIT戦略とシステムの整合性を確保。
役割:企業内のシステム全体を見渡し、最適な構成を設計します。ビジネス戦略に基づき、各部門のシステムが有効に連携するよう調整を行います。技術だけでなく、経営視点での提案が求められるポジションです。
必要なスキル:TOGAF、経営知識、システム統合スキル。
想定年収:900万円〜2,000万円。
1-4.アプリケーションアーキテクト
目的:アプリケーション設計の最適化。
役割:アプリケーションの構造を設計し、開発プロセス全体を支援します。性能、スケーラビリティ、保守性を考慮した設計を行い、技術選定からコーディング規約の策定までを担います。
必要なスキル:ソフトウェア開発、デザインパターン、マイクロサービス設計。
想定年収:700万円〜1,400万円。
1-5.データアーキテクト
目的:データの管理と活用の最適化。
役割:データベースやデータウェアハウスの設計を行い、データの効率的な保存とアクセスを実現します。データモデリングやETLプロセス設計も含まれます。ビッグデータプロジェクトでの重要なポジションです。
必要なスキル:データモデリング、SQL、Hadoop、クラウドデータベース(BigQuery、Redshiftなど)。
想定年収:800万円〜1,500万円。
2.開発系エンジニア
開発系エンジニアは、ソフトウェアやアプリケーションを設計・開発することを主な目的とします。
2-1.フロントエンドエンジニア
目的:ユーザーインターフェースの設計と実装。
役割:ウェブサイトやアプリの見た目や操作性を構築します。具体的には、HTML、CSS、JavaScriptを用いてデザインと機能を統合し、ユーザー体験を向上させます。最新のフレームワーク(例: React、Vue.js)を活用することも一般的です。
必要なスキル:HTML、CSS、JavaScript、React、Vue.js。
想定年収:400万円〜800万円。
2-2.バックエンドエンジニア
目的:アプリケーションのサーバーサイドのロジックを構築。
役割:アプリケーションの裏側で動くロジックやデータ処理を担当します。データベースとのやり取りや、APIの設計・実装が中心です。高トラフィックにも耐えうるスケーラブルなシステムを設計するスキルが求められます。
必要なスキル:Python、Ruby、Java、Node.js、SQL、SRE。
想定年収:450万円〜900万円。
2-3.モバイルアプリエンジニア
目的:スマートフォンアプリの開発。
役割:iOSやAndroid向けのアプリを設計・実装します。ユーザーの利用環境やニーズを考慮し、ネイティブアプリまたはクロスプラットフォームアプリを構築します。ゲーム、SNS、ヘルスケアなど多岐にわたる分野で需要があります。
必要なスキル:Swift、Kotlin、Flutter、React Native。
想定年収:450万円〜850万円。
2-4.ゲームエンジニア
目的:ゲームアプリケーションの開発。
役割:ゲームのロジックやグラフィックのプログラミングを行います。プレイヤーが楽しめるゲーム体験を提供するために、ゲームエンジン(例: Unity、Unreal Engine)や物理演算、AIの実装などが含まれます。特にゲーム業界では、エンジニアリングとクリエイティブの融合が求められます。
必要なスキル:Unity、Unreal Engine、C++。
想定年収:400万円〜800万円。
2-5.フルスタックエンジニア
目的:フロントエンドとバックエンドの両方を担当。
役割:アプリケーション全体を設計し、実装から運用までを一貫して担当します。幅広い技術力が求められるため、プロジェクトの規模によっては非常に重要なポジションとなります。スタートアップや小規模チームで特に需要が高い職種です。
必要なスキル:幅広いプログラミングスキル、DevOps知識。
想定年収:500万円〜1,000万円。
3.インフラ系エンジニア
インフラ系エンジニアは、ITシステムの基盤を支える役割を担います。
3-1.ネットワークエンジニア
目的:ネットワークの設計・構築・運用。
役割:ネットワークの構築から運用、トラブルシューティングまでを担当します。企業の内部ネットワークやVPNの管理だけでなく、最新のクラウドネットワークやSDN(ソフトウェア定義ネットワーク)の知識も求められます。
必要なスキル:TCP/IP、ルーティング、Cisco技術。
想定年収:450万円〜850万円。
3-2.サーバーエンジニア
目的:サーバー環境の構築と運用。
役割:サーバーの設計、設定、保守を行います。データセンターや仮想化環境の運用も含まれることが一般的です。高可用性を確保するための技術が重要です。
必要なスキル:Linux、Windows Server、仮想化技術、SRE。
想定年収:450万円〜850万円。
3-3.クラウドエンジニア
目的:クラウド環境のアーキテクチャの設計、構築、運用、保守を実施する。また、セキュリティ対策やモニタリングなどの管理も行い、サービスの安定稼働を維持する。
役割:AWS、Azure、GCPを活用して、クラウド上でのインフラ構築を行います。オンプレミスからクラウドへの移行プロジェクトや、マイクロサービスの設計なども担当する場合があります。
必要なスキル:クラウド関連知識、Terraform、Docker、SRE。
想定年収:500万円〜900万円。
3-4.データベースエンジニア
目的:データベースの設計と運用。
役割:データの保存、取得、バックアップ、最適化を行います。特にビッグデータの管理や、分散型データベースの設計スキルが求められる場面が増えています。
必要なスキル:SQL、Oracle、PostgreSQL。
想定年収:450万円〜850万円。
3-5.セキュリティエンジニア
目的:システムのセキュリティを確保。
役割:ファイアウォールやIDS/IPSの管理、セキュリティポリシーの策定を行います。脆弱性診断やペネトレーションテストを実施するスキルも重要です。
必要なスキル:セキュリティプロトコル、脆弱性診断。
想定年収:500万円〜1,000万円。
4.プロジェクト管理系
プロジェクト管理系エンジニアは、プロジェクトの計画・進行を支える役割を担います。
4-1.ITコンサルタント
目的:企業のIT課題を解決。
役割:企業が直面するITに関する課題を分析し、最適なソリューションを提案します。システム導入計画の立案や、既存業務プロセスの改善を図る役割もあります。技術知識に加え、ビジネス知識やプレゼンテーション能力が求められます。
必要なスキル:ビジネス分析、IT全般の知識、コミュニケーション能力。
想定年収:600万円〜1,200万円。
4-2.プロジェクトマネージャー(PM)/プロジェクトマネジメントオフィス(PMO)
目的:プロジェクトの成功のためにスコープ、スケジュール、品質、コスト、コミュニケーションなどのマネジメントを行う。
役割:プロジェクトの全体計画を立て、スケジュール管理、リソース配分、リスクマネジメントを行います。複数のステークホルダーを調整しながら、チームをリードする能力が重要です。
必要なスキル:PMBOK、リーダーシップ、リスク管理能力。
想定年収:700万円〜1,300万円。
4-3.プロダクトマネージャー(PdM)
目的:製品の価値を最大化。
役割:ユーザーのニーズや市場の動向を分析し、製品の方向性や機能要件を決定します。エンジニアやデザイナーと協力して、顧客にとって価値の高いプロダクトを開発する役割です。
必要なスキル:市場分析、UXデザイン、ビジネス戦略。
想定年収:600万円〜1,200万円。
5.AI・データ分析系エンジニア
AIやデータ分析系エンジニアは、データを活用して価値を生み出す役割を担います。
5-1.データエンジニア
目的:データ基盤の構築。
役割:企業が扱う膨大なデータを効率的に収集・処理する仕組みを構築します。ETL(Extract, Transform, Load)プロセスの設計やデータストレージの最適化が主な業務です。
必要なスキル:Python、SQL、Hadoop、Kafka。
想定年収:500万円〜1,000万円。
5-2.データサイエンティスト
目的:データを分析して意思決定を支援。
役割:統計分析や機械学習モデルを活用して、ビジネスにインパクトを与えるインサイトを提供します。マーケティングや経営戦略の改善に寄与します。
必要なスキル:Python、R、統計学、機械学習アルゴリズム。
想定年収:600万円〜1,200万円。
5-3.AIエンジニア
目的:AIモデルの開発と運用。
役割:画像認識や自然言語処理などのAI技術を用いたソリューションを開発します。深層学習フレームワーク(TensorFlow、PyTorch)を活用して高度なアルゴリズムを実装します。
必要なスキル:深層学習、数学、プログラミング。
想定年収:700万円〜1,400万円。
5-4.BIエンジニア(データアナリスト)
目的:ビジネスインテリジェンスの提供。
役割:TableauやPower BIなどのツールを使用して、データを視覚化し、経営層や現場チームが意思決定を行いやすくするためのサポートをします。
必要なスキル:BIツール、データベース知識、可視化技術。
想定年収:500万円〜1,000万円。
6.運用系エンジニア
運用系エンジニアは、システムの安定稼働を支える役割を担います。
6-1.運用エンジニア
目的:システムの稼働を維持。
役割:システムの監視、障害対応、運用手順の改善などを行います。安定した運用を確保するために、監視ツールやログ分析を駆使します。
必要なスキル:監視ツール(Zabbix、Nagios)、ログ解析、トラブルシューティング。
想定年収:400万円〜700万円。
6-2.テストエンジニア(QAエンジニア)
目的:システムの品質保証。
役割:システムやアプリケーションの動作確認を行い、不具合を事前に発見・修正します。テスト自動化ツールの導入やスクリプト作成も担当することがあります。
必要なスキル:Selenium、JUnit、テスト設計能力、SRE。
想定年収:400万円〜800万円。
6-3.DevOpsエンジニア
目的:開発と運用の橋渡しを行う。また、導入後を想定した運用設計・分析を行い、サービスを効率的に運用させる役割を担う。
役割:開発と運用のプロセスを統合し、自動化や効率化を推進します。CI/CDパイプラインの設計やインフラのコード化(IaC)を担当します。
必要なスキル:Jenkins、Kubernetes、Ansible、Terraform、SRE。
想定年収:600万円〜1,200万円。
おわりに
ITエンジニアの役割は多岐にわたり、各職種ごとに異なる目的とスキルが求められます。本記事で紹介した20種類の職種は、IT業界の幅広いニーズを反映しています。これからエンジニアを目指す方は、自分の興味や適性に合わせて目指す分野を選び、必要なスキルを身につけていくことが重要です。