こんにちは。わさおです。
この記事では、OpenStack・Kubernetes・OpenShift という3つのプラットフォームの概要と、それぞれの機能や目的、得意分野、そして導入・運用時のポイントを整理し、最終的に違いをまとめています。参考にしてみてください。
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目次
はじめに
近年のITインフラは、物理サーバの管理から仮想化への移行、さらにはコンテナ技術の普及などを経て、急速に高度化・複雑化しています。その中でも注目を集めているのが「クラウド基盤構築」と「コンテナオーケストレーション」の技術です。
本記事では、それらを代表する3つのプラットフォームであるOpenStack、Kubernetes、そしてOpenShiftの概要や特徴、そして導入メリットやユースケースの違いについて解説していきます。
ちなみに、それぞれのプラットフォームを簡単に比較した表がこちらです。
項目 | OpenStack | Kubernetes | OpenShift |
---|---|---|---|
サービスモデル | IaaS | CaaS(Containers) | PaaS / CaaS(Containers) |
主な機能 | 仮想マシンの管理 | コンテナオーケストレーション | コンテナオーケストレーション+開発ツール |
基盤 | 仮想マシン | コンテナ | Kubernetes |
目的 | プライベートクラウドやハイブリッドクラウドの構築 | コンテナ化されたアプリの大規模運用 | コンテナベースのアプリ開発/運用効率化 |
OpenStackとは
概要
OpenStackは、IaaS(Infrastructure as a Service)を実現するためのオープンソースのソフトウェアプラットフォームです。元々はNASA(米国航空宇宙局)とRackspaceが共同開発したプロジェクトを起点とし、現在はOpenStack Foundation(現OpenInfra Foundation)のもと、多数のIT企業やコミュニティメンバーが開発に参画しています。
主な機能
OpenStackは以下のようなコンポーネントで構成され、クラウド環境を総合的に管理・提供します。
- Nova:コンピュートリソース(仮想マシン)の管理
- Neutron:ネットワークサービスの管理(仮想ネットワークやロードバランサなど)
- Cinder:ブロックストレージの管理
- Swift:オブジェクトストレージの管理
- Glance:イメージの管理(OSイメージなど)
- Keystone:認証・認可サービス
- Horizon:ダッシュボードの提供
…など
これらが密接に連携することで、柔軟かつ大規模なプライベートクラウド環境を構築できるのがOpenStackの大きな魅力です。
得意分野
OpenStackは仮想マシンを中心とした仮想インフラの構築を得意としています。
AWSやAzureといったパブリッククラウドで提供されるIaaSと同等の機能を、自社データセンターやプライベート環境で実装可能にする点が強みです。
またオープンソースなので、ベンダーロックインを避けながら自由度の高いカスタマイズが可能になります。
注意点
一方でOpenStackは、数多くのコンポーネントをインストールし、相互接続を正しく構成しなければならないため、学習コストや運用の複雑さが課題になりがちです。
コミュニティ版をそのまま扱うだけでなく、ディストリビューションとして提供される製品(例:Red Hat OpenStack Platform など)を利用することで、サポートや管理ツールの充実を図るケースも多く見られます。
Kubernetesとは
概要
Kubernetesは、コンテナ化されたアプリケーションを運用・管理するためのコンテナオーケストレーションプラットフォームです。
もともとGoogleが社内で長年使用していたBorgというシステムの経験をベースにオープンソース化して公開されました。現在はCloud Native Computing Foundation(CNCF)の旗振りのもと、急速にデファクトスタンダード化が進んでいます。
主な機能
Kubernetesの最も重要な役割は、コンテナの配置・スケーリング・負荷分散・監視などを自動的に行うことです。以下の機能が代表的です。
- Deployment:コンテナアプリケーションのデプロイと更新の管理(ローリングアップデートなど)
- Service:サービスディスカバリおよびロードバランシング
- Pod:Kubernetesにおけるコンテナの最小単位
- ReplicaSet:コンテナのレプリカ数を保証する仕組み
- StatefulSet / DaemonSet:ステートフルアプリケーションやノードごとに1つずつ常駐させたいアプリケーションに対する管理機能
- Ingress:L7ロードバランシングなどのルーティング制御
- Persistent Volume / Persistent Volume Claim:永続的なストレージ管理
Kubernetesにより、コンテナが実行されるノードの数や構成に合わせてアプリケーションの可用性やスケーラビリティを自動的に高めることができます。
得意分野
Kubernetesは主にコンテナの運用管理にフォーカスしており、マイクロサービスアーキテクチャを採用するプロジェクトや、高頻度でアプリケーションを更新するようなケースでの利用に大きなメリットがあります。
クラウドネイティブな開発・運用を効率化するためには、ほぼ必須と言っていいプラットフォームになりつつあります。
注意点
Kubernetesは強力なシステムである一方、初学者には概念が多く設定も複雑という難しさがあります。
またコンテナベースのアーキテクチャに慣れていない環境で導入すると、ネットワークやセキュリティ設定などで戸惑うことが多いでしょう。そのため、トレーニングや小規模なPoC(概念実証)を経て徐々に本番環境へ拡大していくのが一般的です。
OpenShiftとは
概要
OpenShiftは、Red Hat社が提供するKubernetesをベースとしたコンテナプラットフォームです。Kubernetesをコアとして採用しつつ、多彩な運用支援機能や開発者向けの便利機能が付加されています。
オンプレミスやパブリッククラウド上のインフラを問わず導入できる柔軟性も評価されており、エンタープライズ企業を中心に採用が増えています。
主な機能
OpenShiftが提供する機能は大きく分けてKubernetes機能の拡張・管理機能の追加・開発者支援の強化という3つの特徴があります。
- Kubernetesの拡張機能
- 公式Kubernetesに対して、ネットワークやストレージの設定をシンプルにするための独自実装が加えられている。
- セキュリティ面でも独自のSecurity Context Constraints(SCC)を提供。
- 運用管理機能の充実
- Operatorフレームワークを用いたアプリケーション運用の自動化。
- Webコンソール(OpenShiftコンソール)から多くの操作をGUIベースで簡単に行える。
- ログやメトリクス監視、アラート通知機能が統合されている。
- 開発者支援機能
- Source-to-Image (S2I) という独自のビルド機能により、ソースコードからコンテナイメージを自動生成しやすい。
- Webコンソール上でのCI/CDパイプライン構築支援(TektonやArgo CDとの連携機能など)。
- Red Hat製品との連携で、中長期のバージョンサポートを受けられる。
得意分野
OpenShiftはエンタープライズ用途に特化したKubernetesディストリビューションという位置づけであり、商用サポートや運用周りのツールが充実しているのが強みです。
- 「Kubernetesは魅力的だが、運用負荷やセキュリティ確保が大変」
- 「OSSのまま利用するリスクは抑えたい」
- 「開発者がスムーズにアプリケーションをデプロイできる環境を作りたい」
このような企業ニーズに応えられるため、中~大規模の組織を中心に人気があります。
注意点
OpenShiftはRed Hat社のサブスクリプションモデルを基本としているため、ライセンス費用やサポート契約が前提になります。
またOpenShiftの操作方法は、純粋なKubernetesコマンド(kubectl
など)と若干異なる部分がある(oc
コマンドなど)ため、学習コストが発生します。しかしその分、公式サポートやエコシステムが充実しているメリットがあるため、総合的に見るとエンタープライズ向けの選択肢としては有力です。
3つのプラットフォームの違い
1. カバーするレイヤーの違い
- OpenStack:IaaS層を主に担当。仮想マシンや仮想ネットワーク、ストレージといったインフラ基盤を丸ごと管理する。
- Kubernetes:コンテナレイヤーを中心に担当。既存のサーバやクラウド上にデプロイされているコンテナの配置やスケーリングを行う。
- OpenShift:KubernetesベースのPaaS的なプラットフォーム。コンテナの管理に加えて、CI/CDやセキュリティ拡張機能など開発〜運用のライフサイクル全般をサポート。
2. 運用・管理のしやすさ
- OpenStack:コンポーネント数が多く、導入・運用が複雑になりがち。ディストリビューションを利用するか、専門家によるサポートがほぼ必須。
- Kubernetes:オープンソースのままでも大きなコミュニティがあるが、構成の自由度が高いため学習コストは高め。マネージドKubernetes(GKE, EKS, AKSなど)を利用すれば運用負荷を軽減可能。
- OpenShift:Kubernetesに運用ツールやGUI、セキュリティ機能が追加されているため、エンタープライズでは導入しやすい。ただしライセンス費用が発生する点に留意。
3. ユースケース・導入例
- OpenStack:金融機関などが独自のプライベートクラウド基盤を構築し、仮想サーバを大規模に提供するケース。オンプレミス中心の企業が、AWSのようなIaaSの柔軟性を自社環境で再現したい時に採用。
- Kubernetes:アプリケーションのコンテナ化が進んでいるスタートアップから大企業まで幅広く利用。クラウドネイティブな環境でマイクロサービスを運用する際の基盤として不可欠。
- OpenShift:エンタープライズで本番環境向けのコンテナプラットフォームを導入する際に選択されやすい。官公庁や大手企業で、セキュリティやサポートを手厚く受けながらKubernetesを使いたい場合にマッチ。
4. コミュニティ・サポート
- OpenStack:OpenStack Foundationを中心に大規模なコミュニティがある。世界各地で定期的にサミットを開催。商用ディストリビューションを利用すれば各ベンダーのサポートを受けられる。
- Kubernetes:CNCF(Cloud Native Computing Foundation)の最重要プロジェクトとして活発に更新。GoogleやRed Hat、VMwareなど多くの企業がコントリビュートしているため、最新機能の開発スピードも速い。
- OpenShift:Red Hatが商用サポートを提供。エンタープライズの要求に合った長期サポートや認定トレーニング、認定エコシステム(パートナー企業)などが充実。
それぞれを使い分けるポイント
OpenStackを選択する場合
- 仮想マシン中心でワークロードを動かしたい、あるいはオンプレミスで大規模なプライベートクラウドを構築・運用したいケース。
- 既存のサーバ仮想化やVNF(Virtual Network Function)などを統合し、包括的に管理したい企業。
- アプリケーションよりもインフラそのものの柔軟性を確保し、ハイパーバイザーやストレージシステムなどを自由に選びたい場合。
Kubernetesを選択する場合
- コンテナ技術をフル活用して、クラウドネイティブなアプリケーション開発・運用に取り組みたいケース。
- 自社での運用負荷を軽減するためにマネージドKubernetes(AWS EKS、Google GKE、Azure AKSなど)を活用しやすい環境。
- OSSコミュニティの情報量を活用して、アジャイルにシステムを拡張していきたい場合。
OpenShiftを選択する場合
- エンタープライズ向けの包括的な商用サポートと長期サポート(LTS)が必要。
- 開発から運用まで、“GitOps”や“DevOps”の文化を社内に浸透させ、統合プラットフォームとして運用したい。
- Kubernetesベースの柔軟さを保ちつつ、GUIや付加機能による運用・管理の簡素化を求める場合。
まとめ
- OpenStackはIaaSを自社で構築・運用したい場合に強みを発揮するプラットフォーム。大規模なプライベートクラウドや複雑なネットワーク設計を要するケースに適している一方、構築・運用のハードルは高め。
- Kubernetesはコンテナ環境を統合管理する事実上の標準プラットフォーム。最新のクラウドネイティブアプリケーションやマイクロサービスの運用に不可欠な一方、コンテナ技術の学習や設定の複雑さには注意が必要。
- OpenShiftはKubernetesをベースに、エンタープライズ向けの拡張機能や運用管理ツールを追加した商用ディストリビューション。ライセンス費用はかかるが、サポートや運用性を重視する企業にとっては強力な選択肢。
結局、これら3つのプラットフォームは競合というよりはそれぞれ異なるレイヤーをカバーしながら相互に補完関係を持っています。たとえばOpenStack上にKubernetesクラスターを構築する、あるいはOpenShiftをOpenStackで動かす――といった構成も珍しくありません。
自社のワークロードやアプリケーション特性、既存のインフラ資産、そして運用リソースの状況などを総合的に見極めながら、OpenStack、Kubernetes、OpenShiftをうまく使い分けていくことで、効率的かつ柔軟性の高いIT基盤を構築・運用していくことが可能です。
おわりに
本記事ではOpenStack・Kubernetes・OpenShiftの概要やそれぞれの強み、そして導入メリットや注意点について解説しました。大規模なシステムを運用するエンタープライズでは、仮想化やコンテナ技術をどのように組み合わせるかが重要な検討材料となります。ぜひこれらの特徴を踏まえ、自社やプロジェクトに最適なプラットフォーム選定を行ってみてください。
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