はじめに
こんにちは。わさおです。
ビッグデータ時代の到来とともに、大量のデータを効率的に処理するためのプラットフォームとして「Apache Spark」(以下、Spark)が広く注目を集めました。
一方で、クラウドネイティブやサーバーレスといった新たなテクノロジーの進化に伴い、「Sparkはすでにオワコンなのでは?」という声が聞かれることもあります。
本記事ではSparkとはそもそも何なのか、そして本当にオワコン化しているのかを、技術的背景や市場動向を交えながら考察してみます。
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Apache Sparkとは?
Sparkの成り立ちと特徴
Sparkは、カリフォルニア大学バークレー校のAMPLabで開発された分散処理フレームワークが始まりです。
Hadoop MapReduceと同じように、クラスター上で大規模データを処理することを目的としていますが、大きな特徴はインメモリ計算を重視している点です。
従来のMapReduceでは、処理ステージごとにデータをディスクに書き込みますが、Sparkは可能な限りメモリ上で中間データを保持することで、繰り返し演算が多いワークロードで大幅な速度向上を実現しました。
主な機能とエコシステム
- Spark Core
RDD(Resilient Distributed Dataset)という抽象化されたデータ構造を使って、大規模データの並列処理を行います。 - Spark SQL
SQLクエリによるデータ操作機能を提供します。データエンジニアや分析担当者が、SQLを通じてSparkの分散処理を活用できます。 - Spark Streaming / Structured Streaming
ストリーミングデータをリアルタイムに処理する仕組み。マイクロバッチ方式やContinuous Processingなどのアプローチをサポートします。 - MLlib
Spark上で機械学習を行うためのライブラリ一式。回帰分析やクラスタリングなどのアルゴリズムがあらかじめ提供されており、スケーラブルに処理できます。 - GraphX
グラフ理論に基づく解析を行うモジュール。ソーシャルネットワーク分析などに適用されています。
これらのモジュールをまとめて活用できる点がSparkの強みであり、ひとつのフレームワークでさまざまなデータ処理をカバーできるのが魅力です。
Sparkはオワコンなのか?
オワコン説がささやかれる背景
サーバーレスやマネージドサービスの台頭
AWSのGlueやGoogle Cloud Dataflowなど、クラウドベンダーが提供するサーバーレスのETL・データ処理サービスが普及し、「わざわざSparkクラスタを建てて運用しなくてもよいのでは?」という声が増えました。
新興フレームワークとの競合
Apache FlinkやRay、Daskなど、用途特化型あるいはPythonとの親和性が高いフレームワークが登場し、Sparkの存在感が薄れたと感じる人もいます。
コストと運用負荷
Spark自体は無料のオープンソースですが、大規模クラスタを動かすには相応のインフラや管理が必要です。
特にオンプレ運用だとコストがかさみがちで、「クラウドならもっとラクにできるのに」という不満がSparkへの評価に影響しているケースもあるようです。
それでも主要プレーヤーであり続ける理由
汎用性の高さ
Sparkはバッチ処理、ストリーミング処理、SQL、機械学習といった幅広いユースケースを一括でカバーできます。これほど多彩なAPI群を提供し、かつ大規模データに対応できるフレームワークは依然として貴重です。
Databricksなどのマネージド環境
Sparkの生みの親たちが設立したDatabricks社は、クラウド上でSparkを手軽に使えるプラットフォームを提供しています。Delta LakeやUnity Catalogなど周辺機能の充実もあり、大企業を中心に採用が進行中です。
こうしたマネージド環境が「Sparkは導入しづらい」というイメージを払拭しつつあります。
大規模機械学習との相性
データの前処理や特徴量生成をSparkで行い、学習自体はTensorFlowやPyTorchなどを使うパターンが一般的です。インメモリ処理とスケーラビリティを両立できるため、大量のログやイメージデータを扱うプロジェクトでも依然として重宝されています。
活発なコミュニティとバージョンアップ
SparkはApacheのトップレベルプロジェクトとして活発に開発が続けられており、Structured StreamingやGPU最適化など新機能の追加・改良が頻繁に行われています。コミュニティが元気な以上、すぐに廃れる可能性は低いでしょう。
最新動向と使われ方
サーバーレスSpark
クラウド各社がサーバーレスでSparkジョブを実行する選択肢を提供しています。たとえばAWS GlueやAmazon EMR on EKS、Google Cloud Dataproc Serverless、Azure Synapse Analyticsなどです。こうしたサービスを使えば、自前でクラスタを管理せずにSparkの恩恵を受けられるため、運用コストや学習コストを抑えられます。
Spark+クラウドAIとの連携
大規模データから特徴量を抽出して、その後クラウドAIサービスや自前のディープラーニング環境でモデル学習する流れは一般的になりました。Sparkはあくまで分散処理の基盤として機能し、本格的なモデル開発はTensorFlowやPyTorchに任せるケースが増えています。
また、DatabricksのMLflowのように機械学習ライフサイクルを一元管理できる仕組みも人気で、Sparkを含む多様なワークロードをひとつのプラットフォームで扱う動きが加速しているのです。
他のフレームワークとの共存
リアルタイム性を重視するならFlink、Python中心の軽量並列処理ならDask、分散トレーニング特化ならHorovodやRay、というように、ユースケースによってSpark以外を選ぶことも一般的になってきました。
とはいえ、バッチ処理やストリーミング、分析用途まで総合的にカバーする枠組みとしては、Sparkがまだ主要な選択肢であることに変わりはありません。
結論:まだまだオワコンではない
「Sparkはオワコン」という声の裏には、サーバーレスや新興フレームワークの登場、クラウド移行に伴うコスト問題などがあるのは事実です。
しかしながら、マネージドサービスの充実やSpark自身のアップデートにより、依然として大規模データ処理の主力ツールの一つであり続けています。
- インメモリ処理による高速化
- 幅広いAPI(SQL、Streaming、MLなど)の提供
- Databricksや各クラウドベンダーの強力なサポート
- 機械学習やBIにおける高いシェア
これらの理由から、Sparkは今後もしばらくは現役で使われるでしょう。
もちろん、新しい技術が登場するたびにSparkの利用領域は変化していくかもしれませんが、少なくとも「完全に終わった存在」ではありません。
「適材適所でさまざまなツールを組み合わせる」という時代の流れの中でも、Sparkは主要な選択肢として残り続ける可能性が高いです。
まとめ
Apache Sparkは、Hadoop MapReduceの次世代技術として注目され、大規模分散処理の世界を大きく変えてきました。
クラウドやサーバーレスの進化により、Spark以外の選択肢が増えたことで「オワコン説」も出てきましたが、依然として幅広いユースケースをカバーし、マネージドサービスの充実で導入ハードルも下がっています。
大規模データや機械学習の領域では、まだまだSparkが主力であることに疑いはなく、今後も主要フレームワークとして発展していくと考えられます。