【入門編】受入テスト計画書作成の8ステップ(サンプル有り)

システム開発における受入テストの役割は非常に重要であり、テストを成功に導くためには、事前に計画書を作成するべきである。

なぜ、受入テスト計画書を作成するのか。その目的は下記2点である。

 ①受入テストの目的や内容について、関係者間で共通認識を持つため

 ②テストに抜け漏れが無いよう事前に計画し、テストを成功に導くため

では、効果的な受入テスト計画書を作成するためにはどのようにするべきか。本記事では、受入テスト計画書をどのように作成するかステップごとに説明したい。

1.受入テスト計画書の作成手順について

受入テスト計画書の作成手順は、「枠組み」 ⇒ 「詳細」で実施することを推奨する。それぞれにどのような項目があるのかを説明したい。

枠組み

受入テストにおける枠組みで検討すべき項目は以下の通りである。

  • 受入テストの目的
  • 受入テストのスケジュール
  • 受入テストのスコープ

②詳細

受入テストにおける詳細で検討すべき項目は以下の通りである。

  • テスト内容
  • テスト準備
  • 役割分担
  • テスト開始/終了の判定基準
  • テスト時の連絡体制・連絡フロー

上記の検討項目をテスト計画書に落とし込めば良い。それでは、実際の計画書作成手順を解説する。

2.受入テスト計画書作成の8ステップ

STEP①:”受入テストの目的”を定義する

システム開発のプロジェクトは、システム開発経験が豊富な人とそうでない人が混在する

したがって、システム開発経験が豊富でない人にも分かるよう「そもそも受入テストとは何か?」ということから説明・共有が必要である。

そこで、計画書の序章には「受入テストの目的」を定義し、これをプロジェクト内で共有することが重要だ。

計画書に必ず入れるべき内容は下記2点である。

 ①受入テストは、ユーザー目線で業務遂行可能かどうかを判断するためのテストである

 ②受入テストは、システムの検収作業の一つである。つまり、品質を担保する最後の砦であり、不具合や改修要望はこの中で全て洗い出す必要がある。

STEP②:”受入テストのスケジュール”を定める

システム開発の全工程に鑑み、受入テストの開始日と終了日を定める。特に受入テスト前後のタスクの日程を明確にしてから、スケジュールを作成する。

また、受入テスト期間内で不具合や要望を改修する場合はそれらも考慮する。

STEP③:”受入テストのスコープ”を明確にする

受入テストで確認する業務範囲及びシステム範囲を明確にする。その際、業務フローを用いることで、作業者やプロセスがより明確になる。

なお、業務フロー図作成にあたっては、下記記事を参考にして欲しい。

【初心者必見!!】業務フロー図作成の4ステップ

【参考】動的テスト・静的テスト

テストの種類によって、動的テストにするか、静的テストにするかをあらかじめ定義しておくことが重要。
・動的テスト:プログラムを実行して、バク検出や動作確認を行うテスト
・静的テスト:プログラムを実行せずに、成果物やソースコードのチェックにより誤りなどを検出するテスト

STEP④:テスト内容を計画する

このSTEP④は、受入テストの肝となる部分である。受入テストが必要十分なものになるよう設計が必要である。

なお、テスト計画の策定にあたり、特に重要な項目は下記2点である。

テスト内容で特に重要な項目
  1. 受入テストシナリオ
  2. 受入テストデータ

(1)受入テストシナリオ

受入テストシナリオとは、受入テストで実施する業務/システムプロセスのことである。シナリオ作成にあたっては、下記の点を意識すべきである。

 ● 重要な業務は抜け漏れ無く確認する

 ●テスト期間、テスト実施者、システム規模を考慮し、最適なシナリオ数を設計する

なお、受入テストシナリオ作成の方法については、下記の記事を参考にして欲しい。

【入門編】受入テスト仕様書作成の4ステップ(シナリオ・テスト観点のサンプル有り)

(2)受入テストデータ

受入テストで利用するデータの作成方針を定める。(過去の実データを使うのか、架空のデータを使うのかなど。)

STEP⑤:受入テストの準備内容を計画する

受入テスト当日、スムーズに開催するための事前準備もあらかじめ計画しておく。しっかりと計画しておかないと、テスト当日にトラブルで実施できないということにもなりかねない。

少なくとも下記項目をあらかじめ確認しておきたい。

  • 参加者
  • 実施場所
  • 利用端末
  • アカウント権限
  • テスト環境

STEP⑥:役割分担を決める

受入テスト準備及びテスト期間で必要なタスクが洗い出せたら、次に役割を決める。その際、役割分担表を作成し、個人名まで決めることを推奨する。

受入テスト期間の体制について

受入テスト期間の体制では下記3点を意識する。

 ①受入テスト実施の主体者は実際に業務を行うユーザー側の業務メンバーとする

 ②情報システム部門はユーザーをサポートする

 ③開発側メンバーは業務側メンバーから上がった要望やバグに対して、対応する

STEP⑦:テスト開始/終了基準を定める

前述した通り、受入テストは、システム検収の役割を担っているため、開始/終了基準を明確に定めることが重要である。特に終了基準については、曖昧にすべきではない。

テスト開始基準

テスト開始基準としては、以下のような項目を検討するべきである。

  • システムテストは完了しているか
  • 受入テスト計画書は作成し、承認が取れているか
  • テスト開始の承認者は誰か

テスト終了基準

一方、テスト終了基準は以下のような項目を検討するべきである。

  • テスト項目は全て完了しているか
  • 不具合があった場合、修正対応もしくは対応策の策定は出来ているか
  • テスト終了の承認者は誰か

なお、受入テストが基準を満たして終了したかどうかは業務リリース判定会でも考慮される。

【サンプルあり】システム/業務リリース判定チェックリストの作成方法について

STEP⑧:テスト時の連絡体制・連絡フローを決める

受入テスト時の連絡体制と連絡フローを事前に決めておく。

その際、業務側と開発側の役割が明確になるようにする。

3.【まとめ】受入テスト計画書の作成は成功率を上げる

いかがだろうか。

受入テストの成功率を高めるためには、計画書を作成することが、重要であることが分かっていただけたのではないか。

システム開発に関わるユーザーは、闇雲に受入テストを実施するのではなく、効果を最大限まで高めるための準備をするべきである。

なお、下記記事にて、受入テストを体系的に整理しているため、参考にして欲しい。

【初心者向け】受入テスト完全マニュアル

4.参考動画

オンライン研修動画サービスの「Udemy」では成果物の作成方法に関する研修動画がいくつかあります。

個人的には下記『手を動かして学ぶITプロジェクトの資料作成!システム開発のドキュメンテーション技術と成果物テンプレート』の講座がおすすめです。

講師は、外資系コンサルを経験している方なので、コンサルでシステム開発プロジェクトをやっている人にとっては理解しやすいと思います。

非常に参考になりますので、勉強したい方は是非下記の公式サイトから検索・視聴してみてください。

5.参考書籍

下記の書籍はシステム開発の経験が少ない人におすすめである。発注者側の目線で、システム開発を解説しており、入門書として非常に読みやすい。

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