この記事では業務フロー作成について解説したいと思います。
実は業務フローを作成する目的は様々で、例えば以下のようなものが挙げられます。
- IT導入
- 業務効率化
- 業務マニュアル整備
- 内部統制
IT導入を例にすると、システム開発の前に要件定義のフェーズがあるかと思いますが、要件定義フェーズの序盤に作成するべき成果物が業務フローです。
なぜなら、IT導入の目的は業務改善であり、業務とシステムの相関性が見える化されていないと、どのようにITを活用すべきかというあるべき姿が見えてこないからです。
それほどに重要な業務フローですが、作成方法が分からない人もいるかと思いますので、この記事を参考にしていただければ幸いです。
目次
1.業務フロー図の構成要素
業務フロー図は様々な形がありますが、下記の要素を入れることを推奨します。この形式であれば、左から右に時系列で流れていくため、直感的に理解しやすいというメリットがあります。
なお、業務フローは変更が多く発生する成果物ですので、編集しやすさ(メンテナビリティ)を考慮してなるべくシンプルに作成することをおススメします。
- 関係者・関係部署(縦軸)
- 業務プロセス(横軸)
- タスクとフロー
- 関連システム
- 補足情報(作業日数、業務詳細、画面ID、業務プロセス間の連絡手段など)
それぞれの要素について、解説します。
① 関係者・関係部署(縦軸)
縦軸には、プロジェクトに登場する人物や部署を記載します。抜け漏れがないようにフロー図を作成する前に洗い出すことがポイントです。
② 業務プロセス(横軸)
横軸には、業務の始めから終わりまでのプロセスを記載します。業務の区切りでプロセスの矢羽根を分けるようにしましょう。
③ タスクとフロー
業務プロセスに応じたタスクを記載します。
なお、業務フロー図に落とし込むべきタスクは下記いずれかの条件を備えている場合です。
●関係者・関係部署をまたいだ業務
●システムと連携する業務
これらは業務フローにおいて重要なポイントのため、抜け漏れないよう注意しましょう。
また、タスクの図形によって意味が異なります。それぞれの意味を押さえましょう。
(1)開始・終了
業務フローにおける開始点と終了点に設定します。開始点にはフロー開始のトリガーとなるタスクを記載します。
(2)タスク・処理
業務フローの基本図形です。特別な条件が無い限りは、全てこの形でフロー図を作成します。
(3)分岐点
タスクの分岐点を表します。「YES」「NO」の2条件により分岐させることが多いです。右と下の頂点から矢印を出すのが一般的です。
(4)システム
関連システムを表します。システムはタスクに紐づくため、別枠で記載するのが望ましいです。(本記事内のサンプル図を参照ください。)
(5)フロー
タスク間を結びつけるフローです。時系列を表すために矢印を使います。本記事の業務フローは左から右に流れるように作成しております。
④ 関連システム
業務フロー上で登場する関連システムは必ず記載します。今後、業務の全てはデジタル化すると考えてください。そうなると業務フローにおけるシステムの役割は非常に重要です。
業務フロー図を作成する目的に関わらず、関連システムを業務フロー図に入れることは必須と考えてください。
⑤ 補足情報
業務フロー図を作成する目的に応じて、補足情報を記載します。作業日数、業務詳細、画面ID、業務プロセス間の連絡手段などが考えられます。
補足情報は吹き出しに入れるか、補足情報の欄を右側に作るのが良いでしょう。
2.業務フロー図作成の4ステップ
それでは、具体的な業務フロー作成の4ステップを解説します。
STEP1:関係者、関連システム、作業内容を洗い出す
STEP2:STEP1を元に縦軸と横軸を決定する(全体の枠組みを作る)
STEP3:それぞれの相関性と作業の流れを明確にし、フローを作る
STEP4:必要に応じて補足する(作業日数、作業詳細など)
STEP1:関係者、関連システム、作業内容を洗い出す
AsIs(現状)の業務およびシステムを把握する
まず、やらなければならないことはAsIsの業務を把握するということです。
そのためにはAsIsの業務フローを取得するのが最も手っ取り早いです。ただし、業務フローが存在しなかったり、更新されておらず、現状と合っていないということがしばしばあります。その場合は関係者にヒアリングしながら業務フローを整理していく作業が必要になります。
重要なことは関係者、関連システムを漏れなく全て洗い出すことです。
ほとんどの場合、業務フロー図を作成する人は全ての部署の作業を認識出来てはいません。つまり、関係者に対して、ヒアリングを徹底することが非常に重要となります。
正確な業務フローを作成しないと、要件定義にも大きく影響してきます。そのため、手を抜かずにとにかく関係者にヒアリングを徹底しましょう。
AsIs(現状)の業務の問題点や改善点を洗い出し、ToBe(あるべき姿)を検討する
次に、AsIsの業務フロー見ながら、関係者と問題点や改善点を洗い出します。あるべき姿を考える際には、以下のようなポイントを考慮します。
- 業務の目的は何か
- 全体感を示せているか
- 余計なプロセスは無いか
- 効率化できるところは無いか
- イレギュラーフローは漏れなく考慮できているか
STEP2:STEP1を元に縦軸と横軸を決定する(全体の枠組みを作る)
横軸は業務プロセス、縦軸は関係部署とする
STEP1で正確な情報を入手出来たなら、次に行うことは業務フロー図全体の枠組みを作ることです。
業務フロー図の枠組みのパターンはいくつかありますが、基本的なパターンは下記の2軸になります。
横軸:業務プロセス
縦軸:関係部署(もしくは関係者、関係会社など)
まずは、この形で作成できるようにしましょう。
なお、システムは縦軸の一番下に配置するか、作業プロセスと一緒に記載することをおススメします。
STEP3:それぞれの相関性と作業の流れを明確にし、フローを作る
業務開始基準と終了基準を明確にする
業務開始基準と終了基準を明確にすることは重要です。つまり、何がきっかけでその業務が開始となり、何を満たしたら終了になるかを明確にするということです。
要件定義のスコープを明らかにする意味でも業務の始めと終わりには注意を払いましょう。
STEP4:必要に応じて補足する(作業日数、作業詳細など)
プロセス間の時間が重要になる場合は日数や時間を追記する
各作業(プロセス)の間は手順が明確になるように矢印などで接続します。
もし、プロセス間の期間や時間が重要になる場合は、作業日数や作業時間が分かるように補記しましょう。
作業内容が複雑な場合は詳細を記載する。
業務フロー図だけでは、作業詳細を表すことは難しいため、必要に応じて補記します。
特に要件定義でポイントになりそうな箇所や認識齟齬となりそうな箇所は注意しましょう。
3.業務改善目的で作成する場合はAsIsとToBeを意識しよう
業務改善を目的として業務フローを作成する場合は、現状(AsIs)とあるべき姿(ToBe)の両方のフローが必要になります。
そのためには、まず関係者へのヒアリングを徹底し、AsIs業務フローを作成しましょう。
次に、AsIs業務フローをベースに、改善点などを洗い出し、ToBe(あるべき姿の)業務フローの作成を行います。
4.詳細フローとは別に1枚で表現出来る全体フロー(タイムチャート)を用意しよう
業務の詳細フローだけではなく、1枚で全体像が分かるフローも用意すべきです。このような全体フローを作成することで、関係者間の認識統一がかなり楽になります。作成のポイントとしては、、、
・フローの時系列および具体的な日付/タイミングを明確にする
・業務に精通していない人でも分かるような表現にする
・1枚でまとめられる粒度感にする
などです。
5.業務フロー作成に関するおすすめ本はこちら
下記は業務フロー作成方法を勉強するのにおススメの本です。是非参考にしていただければと思います。
業務改革の教科書ー成功率9割のプロが教える全ノウハウ
業務改革のノウハウが実例と共に示されており、実践でも使える良書。初心者、上級者問わずおすすめ。
業務改革、見える化のための業務フローの描き方 プレミアムブックス版
国際標準のBPMNのフローの書き方を紹介している本。やや中級者向けである。
6.【まとめ】業務フローは要件定義の序盤に作成するべき重要な成果物である
業務フロー図は業務改善のためには必ず作成しておきたい成果物です。
業務がある以上はどんな仕事でも業務改善の余地があるわけで、業務フロー図の作成スキルはどんな仕事にも役に立つということです。
是非、業務フロー図を作成し、業務改善に繋げていただければと思います。
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