こんにちは。わさおです。
通信キャリアのネットワークオープン化の概要、背景、メリット・デメリット、技術要素、そして今後の展望などを総合的にまとめました。ブログ記事としてご活用いただければ幸いです。
目次
通信キャリアのネットワークのオープン化とは何か
近年、通信キャリア各社におけるネットワークの「オープン化」が業界の重要なトレンドとして注目されています。ここでいうネットワークのオープン化とは、従来は特定ベンダーの専用ハードウェアやプロプライエタリなソフトウェアに依存して構築されてきた通信ネットワークを、ソフトウェアやハードウェアを含めたさまざまなコンポーネントの「相互運用性」や「相互接続性」が高い形で再設計しようとする動きのことを指します。
具体的には、たとえば「Open RAN(オープンRAN)」や「O-RAN」と呼ばれる概念が代表例として挙げられます。これらは、基地局などの無線アクセスネットワークを構成する機器をオープンな仕様で分割し、異なるベンダーの機器同士が相互に接続できるように標準化を進めようという試みです。日本国内でもNTTドコモや楽天モバイルなどが積極的に取り組み、通信インフラのさらなる高性能化やコスト削減、革新的なサービス創出を目指しています。
本記事では、通信キャリアのネットワークオープン化がなぜ注目されているのか、その背景や技術的要素、そしてメリット・デメリットを整理しつつ、今後の展望について考えてみたいと思います。
背景:従来型ネットワークの課題とオープン化への要望
1. 従来の通信インフラは“ブラックボックス化”しがち
従来のモバイルネットワークは、特定ベンダーの通信機器を“箱”として導入し、そのベンダーの管理ツールやオペレーションソフトウェアによって運用するのが一般的でした。大手通信機器メーカー(いわゆるベンダー)は自社の仕様を標準化団体と調整しつつ、独自のチップやプロトコル実装を盛り込み、機器全体をパッケージとして提供するため、キャリア側はベンダーに依存した形でネットワークを構築・運用することが多かったのです。
この構図では、ハードウェアとソフトウェアが密結合しているため、一部を変更・アップグレードしようとすると、ほぼすべての機器やシステムを入れ替える必要が生じたり、特定ベンダーに長期間ロックインされるケースがありました。ネットワークを拡大・刷新する際には多額の設備投資が必要になり、コスト効率や技術の柔軟性という観点で課題が顕在化していました。
2. トラフィックの増大と新技術への対応
スマートフォンの普及とともに通信トラフィックは爆発的に増加しており、キャリア各社はネットワークの高速化や大容量化への投資を継続的に行う必要があります。さらに近年では5Gや将来的な6Gといった新技術の導入、IoT(モノのインターネット)の普及、産業向けエッジコンピューティングの需要などが相まって、ネットワーク全体をソフトウェア的に柔軟に制御する必要性がますます高まっています。
このような状況下で、従来の“閉ざされた”ネットワークアーキテクチャでは、システムの拡張や機能追加のスピードを上げることが難しいという問題が浮き彫りになりました。新しい通信規格へのアップグレードやクラウドネイティブ化、仮想化技術の導入にあたって、ベンダーと密接に連携する必要があるだけでなく、その連携範囲が非常に広範にわたるため、コストと時間が膨大にかかってしまうのです。
3. 業界標準化と技術革新の加速
こうした背景を受けて、標準化団体や業界コンソーシアムでは、ネットワークのインターフェースをオープンにし、ソフトウェアとハードウェアを分離し、異なるベンダーの製品を柔軟に組み合わせられるようにする取り組みが加速しています。特にOpen RANアライアンスやTIP(Telecom Infra Project)といった団体が主導する標準化作業に注目が集まり、世界中のキャリア・ベンダー・IT企業・クラウド事業者などが参加し、技術仕様や実装例を共有しています。
オープン化を支える主な技術要素
1. NFV(Network Functions Virtualization)
ネットワーク機能の仮想化技術であるNFVは、従来ハードウェア装置上で動作していたルータやファイアウォール、ロードバランサなどの機能をソフトウェア化し、汎用サーバ上で実行できるようにする試みです。ベンダー独自の専用機器に依存することなく、仮想マシンやコンテナ、クラウド基盤で必要な機能を柔軟に立ち上げ、スケールアウト・スケールインが可能になります。これにより、ネットワーク機能のアップグレードや追加が迅速に行えるほか、運用コストの削減にも寄与します。
【初学者向け】NFV入門:仮想化が切り拓く次世代ネットワークの世界2. SDN(Software-Defined Networking)
SDNは、ネットワークをソフトウェア的に制御・管理するための概念であり、コントロールプレーン(制御層)とデータプレーン(実際の通信処理を行う層)を分離することを基本としています。オープンなAPIやプロトコル(代表例はOpenFlow)を活用し、集中管理型のコントローラからネットワーク機器を制御することで、ダイナミックなトラフィック制御やサービス展開が可能になります。SDNはデータセンターや大規模クラウドでの導入が先行していましたが、キャリアネットワークでもNFVと組み合わせる形で実用化が進んでいます。
【初学者向け】SDN入門ガイド:ソフトウェアで拓く新しいネットワーク制御の世界3. オープンなインターフェースとマルチベンダー環境
Open RANに代表されるように、RAN(無線アクセスネットワーク)の構成要素を複数に分割し、それぞれの区間でオープンなインターフェースを定義する取り組みが増えています。従来は基地局ベンダーからすべて一括で提供されていたハードウェアとソフトウェアが、CU(Centralized Unit)、DU(Distributed Unit)、RU(Radio Unit)などに分離され、それぞれに標準インターフェースが設定されます。これにより、たとえば無線部はA社、制御部はB社、管理ソフトウェアはC社というように、マルチベンダーでの組み合わせが可能になります。
このようなマルチベンダー環境では、キャリア側が性能やコスト、運用性などの面で最適な組み合わせを模索できるため、オープン化によるイノベーションが期待されています。
オープン化のメリット
1. コスト削減と柔軟な設備投資
オープン化により、キャリアは特定のベンダーに依存しないネットワーク構築が可能となり、ベンダー間の競争を促進できます。競争原理が働くことで、ハードウェアやソフトウェアライセンスの価格が抑制される可能性が高まります。また、汎用サーバやクラウドを活用した仮想化基盤を導入することで、機能追加や拡張を必要なときに必要な分だけ行えるようになり、初期投資や拡張投資の負荷を分散できる利点があります。
2. 技術革新とサービス開発スピードの向上
オープン化によってネットワークの制御や機能がソフトウェア主導に移行すると、新たなサービスを開発・提供するまでのリードタイムが短縮されます。たとえば、エッジコンピューティングを活用したリアルタイム分析やVR/ARサービスといった高度な機能も、クラウドネイティブな仕組みを利用してスピーディに試験導入できます。今後は5Gの高度化版(5G-Advanced)や将来的な6Gでもソフトウェアの柔軟性がますます重要になるため、オープン化の流れは加速していくと考えられます。
3. イノベーション創出とエコシステム拡大
オープンなインターフェースが整備されることで、新規参入ベンダーやスタートアップ企業も通信キャリアのネットワーク関連市場に参入しやすくなります。これまで携帯基地局やネットワーク機器の分野はごく少数の大手ベンダーに限られていましたが、オープン化が進むとベンダーやソリューションプロバイダの選択肢が広がり、イノベーション創出の機会が増加します。さらに、ソフトウェア実装のコミュニティやオープンソースプロジェクトが活発化すれば、業界全体としての開発速度が上がり、結果として通信インフラの質の向上につながります。
オープン化のデメリット・課題
1. マルチベンダー環境の複雑化
オープン化により異なるベンダーの機器やソフトウェアを組み合わせる場合、その相互接続や運用をどのように管理するかが大きな課題となります。各コンポーネントは標準インターフェースに準拠しているとはいえ、実運用環境では細かなパラメータや仕様の違い、ソフトウェアバージョンの非互換などさまざまな問題が顕在化します。こうしたマルチベンダー環境の統合と運用保守を誰がどのように担うかは、キャリアにとって頭の痛い問題です。
2. 運用・保守の責任分担と人材育成
従来のように特定ベンダーがシステム全体を一括でサポートしてくれる体制とは異なり、オープン化では複数ベンダーが混在するため、障害発生時の原因切り分けや責任分担が複雑化します。加えて、ソフトウェアのアップデートやパッチ適用の頻度が高まることで、運用管理者側のスキルや知識がより高度かつ幅広いものを求められます。キャリア側は自社内にオープンネットワークを理解し、マルチベンダー環境を扱えるエンジニアを育成・確保しなければ、安定運用を実現するのは困難です。
3. セキュリティリスクの増大
オープン化は多様なベンダーやソフトウェアコンポーネントを導入することを意味し、システム全体としてのセキュリティリスクも増加し得ます。特に、仮想化されたネットワークやAPIが公開される環境では、サイバー攻撃の可能性や脆弱性管理の負担が高まります。また、オープンソースソフトウェアを活用する場合も、脆弱性の早期発見・修正をコミュニティと連携して行う体制が必要であり、従来のキャリアネットワークとは異なるリスク管理が求められます。
国内外の動向と事例
1. 国内の取り組み
日本国内では、NTTドコモが「O-RANアライアンス」の主要メンバーとして、早くからオープンRANの実証や商用化に取り組んでいます。また、楽天モバイルは完全仮想化されたモバイルネットワーク「Rakuten Mobile Network」を構築し、RCP(Rakuten Communications Platform)として海外展開も視野に入れています。KDDIやソフトバンクもOpen RANコンソーシアムに参加しており、今後各社がどのようにオープン化を推進し、マルチベンダー環境を実現していくのか注目されています。
2. 海外キャリアの事例
海外では、VodafoneやTelefonica、Orangeなどヨーロッパの大手キャリアを中心にOpen RANの試験導入や運用が進んでいます。アメリカの大手通信企業も、地域限定でオープンRAN技術のテストを行ったり、5G展開に合わせて新規基地局をオープンアーキテクチャで構築するなど、オープン化の取り組みが広がっています。特にエマージングマーケットでは、新規導入コストを抑えつつ高速ネットワークを提供したいというニーズが強いため、オープン化によるコスト削減効果が期待されています。
今後の展望と課題への対応策
1. 次世代通信(5G-Advanced、6G)への適用
5Gが普及期に入り、次のフェーズとして5G-Advancedや6Gに向けた研究開発が活発化しています。これら次世代通信では、超高速・超低遅延だけでなく、ネットワークの自律制御やAIの活用、衛星通信との統合など多岐にわたる要件が提示されています。オープン化されたネットワークであれば、ソフトウェアアップデートや機能追加を迅速に行えるため、これら高度な要件にも柔軟に対応できる可能性が高まります。
2. 運用管理の自動化とAI活用
マルチベンダー環境の増大やソフトウェアアップデートの頻度増加に対応するためには、運用管理の自動化が不可欠です。SDNやNFVの導入だけでなく、AI/機械学習を活用してトラフィックの異常検知や障害予測を行う技術が注目されています。将来的にはネットワーク自体が利用状況や障害の兆候をリアルタイムに分析し、自己修復やリソース最適化を自動で行う「自律型ネットワーク」へと進化すると期待されています。
3. エコシステム強化と標準化の進展
オープン化を進めるには、業界全体で標準仕様を策定・検証し、相互接続性を実証していくプロセスが不可欠です。キャリアやベンダーのみならず、IT企業やクラウド事業者、オープンソースコミュニティなど多様なステークホルダーが協力してエコシステムを築く必要があります。たとえばO-RANアライアンスやTIPなどの活動に参加することで、共通仕様とリファレンス実装を充実させ、オープン化の恩恵を最大化していくことが求められます。
4. セキュリティと信頼性を両立する仕組みづくり
オープン化によって生じるセキュリティリスクや運用上の責任分担をクリアするために、セキュリティ基準の策定や相互監査の体制構築が進められています。新たに導入するソフトウェアや機器について、脆弱性スキャンやセキュリティパッチの配布手順を明確化することはもちろん、クラウドやデータセンターの物理的な安全性、APIアクセス制御など多層的なアプローチが必要です。キャリアとしては、社会インフラを担う存在として高い信頼性と安定稼働を保証する責任があるため、オープン化とセキュリティ対策の両立が今後の大きなテーマとなります。
主要ベンダーについて
1-1. RAN関連ベンダー(OpenRAN専業ベンダー)
Mavenir
アメリカを拠点に、vRAN(仮想化RAN)やOpen RANソリューションを幅広く提供しています。4Gや5GだけでなくIMSやコアネットワーク製品も扱い、フルスタックを提供できる点が特徴です。
Parallel Wireless
アメリカ発のOpen RAN専業ベンダー。2G/3G/4G/5Gのマルチ世代をソフトウェア的に統合する「オールG」ソリューションを強みとしています。新興国や地方エリアなど、低コストのRAN構築が求められる場所での導入事例が多いです。
Altiostar(アルティオスター)
元々は米国拠点ですが、楽天グループ傘下となった後は楽天モバイルの仮想化RAN技術を支える重要企業として知られています。ソフトウェアベースのOpen RANソリューションを提供し、国内外の通信キャリアと協業しています。
1-2. RAN関連ベンダー(伝統的な大手ベンダー)
Nokia
フィンランドの大手通信機器ベンダー。従来の自社製RANに加え、O-RANアライアンスにも参画し、オープンなインターフェースへの対応やvRAN・クラウドRANソリューションを打ち出しています。
Ericsson
スウェーデンの大手ベンダー。O-RANアライアンスには一時期距離を置いていたものの、近年はオープン化に向けた取り組みを強化しつつあります。独自のクラウドRANやRANインテリジェンス機能を提供しています。
Samsung
韓国の大手電機メーカーであり通信機器ベンダー。5Gの基地局シェアを伸ばす中で、Open RANや仮想化に向けた対応を積極的に進めています。NTTドコモ、KDDI、Verizonなど多くのキャリアとの協業実績があります。
NEC
日本国内だけでなく、海外でもOpen RAN市場を狙う動きが活発です。O-RAN準拠のRU(Radio Unit)を中心とした無線周りのソリューションを得意とし、NTTドコモやRakuten Mobileとも協力関係にあります。
Fujitsu(富士通)
こちらも日本を代表するIT企業として、オープンRAN対応のRU製品などを提供しています。大手キャリアのオープン化プロジェクトに参画し、商用化実績を積み上げています。
2. コアネットワーク(NFV/クラウドコア)関連ベンダー
Affirmed Networks
元々はクラウドネイティブなモバイルコアを提供していたスタートアップ企業。現在はマイクロソフト傘下となり、Azureとの連携や5G SA(スタンドアロン)のクラウドコアで実績を持っています。
Metaswitch
こちらもマイクロソフトに買収された企業で、IMSやSBC(Session Border Controller)などのクラウドベースソリューションを提供。オープンアプローチによるコア機能の仮想化を推進しています。
Cisco
ルータやスイッチで著名ですが、近年はNFV対応の仮想化コア、SDNソリューションにも力を入れています。5G時代のエッジコンピューティングやネットワークスライシングに対応した包括的な製品ラインナップを持ちます。
Huawei/ZTE
中国系ベンダーはO-RANアライアンスとの関係がやや複雑なものの、自社製品の仮想化やSDN化は着実に推進しています。各国のセキュリティ要件や政策によって導入の可否が分かれるケースが多いです。
3. 仮想化ソフトウェア基盤ベンダー
VMware
企業向け仮想化ソフトウェアで有名ですが、NFVやテレコム向けのソリューションにも拡大しています。SD-WANやコンテナ基盤の「Tanzu」など、クラウドネイティブアプリケーション運用を総合的にサポート。
Red Hat
オープンソースの雄。OpenStackやKubernetesベースの「OpenShift」など、キャリアグレードのソリューションを提供しています。NFV/SDN環境のオーケストレーションを含め、コアからエッジまで幅広い活用事例が存在します。
Canonical(Ubuntu)
Linux系OSのUbuntuの企業版やOpenStackディストリビューションを提供。ネットワーク機能の仮想化やコンテナ化を支援するツールチェーンを揃えており、キャリアや大規模データセンター事業者との協業も進行中です。
4. システムインテグレータ
Tech Mahindra、Wipro、HCL などのインド系大手SI
Open RANやNFVを含むマルチベンダー環境を統合・運用するサービスを提供。通信キャリアがオープン化を実装する際、設計からテスト、運用まで一貫してサポートするケースが増えています。
Accenture、IBM など
グローバルに展開するコンサル・SI企業。クラウドネイティブなネットワーク構築や運用改革プロジェクトに参画し、通信キャリア向けのオーケストレーションやBSS/OSSの高度化を支援しています。
5. チップセット・ハードウェア基盤ベンダー
Intel
オープン化や仮想化で中心的役割を担う半導体メーカー。汎用CPU(Xeon)だけでなく、FPGA(Intel FPGA)や専用アクセラレータ(eASIC)を提供し、RANやコアの仮想化を高効率化する取り組みを推進しています。
Qualcomm
スマートフォン向けSoCで有名ですが、基地局向けチップや無線技術の研究開発も幅広く行っています。O-RANアライアンスでの仕様策定やリファレンスデザインに協力する動きもあります。
NVIDIA
AIやGPUのイメージが強いですが、DPU(Data Processing Unit)を含むネットワークアクセラレーション製品に注力しています。大規模なvRANやエッジコンピューティングで高い性能を発揮するソリューションを展開中です。
Marvell、Broadcom、NXP
通信用半導体の専業・大手ベンダーとして、フロントホール/バックホール向けチップやSoCを提供しています。O-RANに対応したリファレンスボードやソフトウェアスタックを多くのRANベンダーに供給する立ち位置です。
6. オープンソースコミュニティ・標準化団体
オープン化に絡むベンダーの活動を語るうえで忘れてはならないのが、各種コミュニティやコンソーシアムです。これらの場に多様なベンダーが参画し、仕様策定・相互接続性テスト・リファレンス実装の開発などを行っています。
O-RAN ALLIANCE(Open RANアライアンス)
無線アクセスネットワークに関するオープン仕様を策定。NTTドコモ、AT&T、China Mobile、Orange、Telefonicaなど世界の大手キャリアと、Nokia、NEC、Fujitsuなどのベンダーがコアメンバーとして活動しています。
TIP(Telecom Infra Project)
Facebook(現Meta)が主導で設立した通信インフラに関するオープンコミュニティ。RAN、オープン光伝送、コアネットワーク、エッジコンピューティングなど幅広い分野でプロジェクトが進行中です。
Linux Foundation Networking(LFN)
ONAP(Open Network Automation Platform)など、ネットワークの自動化やマネジメント系のオープンソースプロジェクトを多数抱える組織。キャリアやベンダーが共同開発に参加し、NFV/SDNの普及を後押ししています。
ONF(Open Networking Foundation)
SDN技術(OpenFlowなど)の標準化・普及を目指す非営利団体。近年はCORD(Central Office Re-architected as a Datacenter)など、通信事業者のデータセンター化を推し進めるプロジェクトも主導しています。
まとめ
通信キャリアのネットワークのオープン化は、従来の閉鎖的なシステム構成から脱却し、複数ベンダーの製品やソフトウェアを柔軟に組み合わせることで、コスト削減やサービス開発スピードの向上、イノベーション創出など多くのメリットをもたらす可能性を秘めています。一方で、マルチベンダー環境の複雑化や運用保守体制の構築、セキュリティリスクの高まりなど、新たな課題も多数浮上することは避けられません。
特に5Gや将来の6G時代には、ネットワークに求められる要件が多様化し、かつ高度化していく見通しです。そのためにはソフトウェアや仮想化、クラウド技術を駆使し、柔軟かつアジリティの高いネットワークを実現することが求められます。オープン化はまさにこのような要件にマッチしており、国内外のキャリアやベンダー、IT企業が連携して大きなエコシステムを構築することで、新たな価値が生まれていくでしょう。
今後は、標準化団体の動きや商用導入事例を注視しつつ、通信キャリア自身がどういった形でオープン化に取り組み、どのように課題を克服していくかが重要なポイントとなります。イノベーションの加速と設備投資の効率化を同時に追求するうえで、ネットワークオープン化は避けては通れない道です。通信インフラは社会の基盤であるからこそ、オープン化によってより強靭で柔軟なネットワークを実現し、新しい時代のニーズに応えていくことが期待されます。