【10選】企業で使われる代表的なワークフローツールを解説します

はじめに:企業で使われるワークフローツールとは?

企業には、日々の承認業務や申請処理など、定型的・繰り返し的な作業が数多く存在します。これらの業務を効率化し、ミスの削減や業務可視化に大きく寄与するのが、いわゆる「ワークフローツール」です。

ワークフローツールを導入すると、従来は紙ベースで時間や手間がかかっていた稟議書や経費精算などの承認プロセスが電子化・自動化され、属人的だった仕事の流れを標準化できます。

近年ではクラウドの普及やテレワークの増加を背景に、いつでもどこでも申請・承認が行える環境の整備が求められるようになりました。

それに伴い、単なる電子申請システムにとどまらず、ERPやCRM、RPA(Robotic Process Automation)などとも連携してより複雑な業務プロセス全体を効率化する仕組みが注目を集めています。

本記事では、企業で代表的に導入されるワークフローツールの特徴やメリット、選定時のポイントなどをまとめて解説します。

ワークフローツール導入のメリット

  1. 承認プロセスの効率化
    紙やメールでのやり取りが主流だった業務フローを電子化することで、承認までにかかるリードタイムを大幅に短縮できます。これにより、承認待ちが原因で業務が滞るリスクが減少し、全体的な生産性向上が期待できます。
  2. 業務の可視化と属人化の防止
    誰がいつ申請し、どの段階で承認が行われているかをシステム上でリアルタイムに確認可能となります。担当者が不在でも業務の進捗を把握できるため、特定の人に業務が集中し過ぎるリスクを低減し、引き継ぎの円滑化にも寄与します。
  3. 監査やコンプライアンス対応の強化
    電子化された申請・承認の履歴は、時系列でデータとして保存されます。そのため、内部統制や監査対応が必要な際に、履歴を容易に追跡・照合でき、不正やミスを早期に発見することができます。
  4. 業務改善のための分析が容易
    ワークフローツールにはレポート機能やKPIダッシュボードなどが搭載されているケースが多く、どのプロセスにどれだけ時間がかかっているかなどを可視化しやすいです。これらのデータを基に業務フローを見直し、継続的に改善していくサイクルを回せるようになります。

1. Questetra BPM Suite

  • 特徴: ブラウザベースで動作するBPM(Business Process Management)ツール。ドラッグ&ドロップでワークフロー図を作成し、ヒューマンタスクと自動処理を組み合わせることができる。
  • メリット: 視覚的にプロセスを定義・編集しやすい。クラウド型が中心で導入コストを抑えられる。
  • 利用シーン: 契約書の承認フロー、経費精算、営業案件の審査プロセスなど。

2. X-point(エクスポイント)

  • 特徴: 紙の稟議書や申請書を電子化するイメージで操作できる日本国内向けワークフローシステム。
  • メリット: 直感的なインターフェースで、既存の紙書類をそのままデジタルに置き換えるような感覚で利用可能。日本企業独特の承認プロセスにフィットしやすい。
  • 利用シーン: 稟議、経費精算、出張申請など、紙で運用していた申請フローの電子化。

3. Gluegent Flow(グルージェントフロー)

  • 特徴: Google WorkspaceやMicrosoft 365 との連携を強みとするクラウド型ワークフロー。
  • メリット: GメールやOutlookとの連携、GoogleドライブやOneDriveなどのファイル共有とスムーズに組み合わせられる。
  • 利用シーン: G Suite(Google Workspace)を基盤とした業務フローの自動化、承認通知をメールでスピーディにやりとり、クラウドストレージとのファイル連携など。

4. kintone(サイボウズ)

  • 特徴: ノーコード/ローコードで業務アプリを構築できるプラットフォーム。ワークフロー機能も備えており、フォーム作成やテーブル管理を簡単にカスタマイズ可能。
  • メリット: 部署単位やプロジェクト単位で簡易アプリケーションを作成し、承認フローを組み込むなど柔軟に運用できる。
  • 利用シーン: 案件管理、見積承認フロー、在庫管理や問合せ対応など、多様な業務プロセス。

5. Microsoft Power Automate(旧Microsoft Flow)

  • 特徴: Microsoft 365やDynamics 365との親和性が高いローコードのRPA/ワークフロー作成ツール。外部サービスとも連携しやすい。
  • メリット: Excel、SharePoint、Outlook、Teamsなどとのシームレスな連携。豊富なテンプレートがあり、簡単に自動化フローを作成できる。
  • 利用シーン: メール添付のファイルを自動でOneDriveに保存、承認後にTeamsに通知、SaaS間のデータ連携など。

6. Salesforce Flow(Salesforce)

  • 特徴: Salesforceプラットフォーム上で動作するワークフロー機能(Lightning FlowやProcess Builderなど)。
  • メリット: セールス・サポート・マーケティングなどSalesforce上で扱うデータをトリガーにプロセスを自動化できる。
  • 利用シーン: 商談成立時のメール通知、取引先レコードの自動更新、リードの承認フローなど。

7. ServiceNow

  • 特徴: ITサービス管理(ITSM)から始まったプラットフォームだが、IT部門に限らず人事や経理、施設管理などさまざまな業務プロセスのワークフローを統合可能。
  • メリット: インシデント管理や変更管理などIT運用系と一元的に管理しやすい。ノーコード/ローコード開発も可能で拡張性が高い。
  • 利用シーン: ITヘルプデスク対応の申請・承認フロー、IT資産管理、設備管理などエンタープライズ全般。

8. IBM Business Automation Workflow(旧IBM BPM)

  • 特徴: 企業の大規模ワークフローやビジネスプロセスを統合・自動化するためのプラットフォーム。BPMN(Business Process Model and Notation)に対応。
  • メリット: 大規模かつ複雑な業務フローを安定的に運用可能。分析ツールやAIとの連携も視野に入れたプロセス改善ができる。
  • 利用シーン: 銀行・保険など金融機関の審査プロセス、製造業の品質管理プロセスなど、高い信頼性を求める領域。

9. Appian / Pega などのBPMプラットフォーム

  • 特徴: 大手企業向けBPMツール。広範な業務をモデル化し、プロセス自動化・モニタリング・分析を行う。
  • メリット: 組織横断で複数部門にまたがる複雑なプロセスを一元管理しやすい。
  • 利用シーン: 大規模企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進や、既存システムと連携した業務最適化。

10. その他SaaS系ツール(Zapier, Integromat(Make), IFTTTなど)

  • 特徴: 複数のWebサービスをノーコードで連携させるiPaaS(Integration Platform as a Service)の代表例。
  • メリット: クラウドサービス間のデータ連携や簡易的な自動化に強み。ワークフローを素早く試作し、検証できる。
  • 利用シーン: フォーム送信内容のSlack通知、顧客情報の自動登録、クラウドストレージへのファイル移動など。

ワークフローツール選定時のポイント

  1. 業務要件への適合度
    • 自社の承認フローや申請手順が複雑な場合、それらを無理なく組み込めるか。日本特有の稟議・回覧を標準機能としてサポートしているかなどを確認しましょう。
  2. 既存システムとの連携性
    • 社内で既に活用しているERPやCRM、コミュニケーションツール(Microsoft 365やGoogle Workspaceなど)との親和性は重要です。二重入力が発生しないよう、シングルサインオン(SSO)対応やAPI連携が充実しているかをチェックしましょう。
  3. UI/UX と操作性
    • 導入後に利用者が増えるほど、使い勝手の良し悪しが定着率を左右します。ノーコード・ローコードで簡単にワークフローを修正できるか、承認画面が見やすいか、といった点が大切です。
  4. クラウド型 or オンプレミス型
    • セキュリティポリシーや既存のインフラ環境によって、クラウド型とオンプレミス型のどちらが適しているかが変わります。社外からのアクセスが多い場合やアップデート管理を簡単にしたい場合はクラウド型が便利ですが、厳密なデータ管理が必要な場合はオンプレミスを検討するケースもあります。
  5. スケーラビリティ・拡張性
    • 将来的に利用部門やフローの数が増える場合、ライセンス体系やシステム構成が柔軟に拡張できるかも確認が必要です。部門ごとに段階的に導入してもスムーズに統合できるかを見極めましょう。
  6. サポート体制と実績
    • ベンダーが提供するサポートの品質や導入実績を調べることも重要です。導入時の支援だけでなく、運用中のトラブル対応やアップデート時のサポートがどの程度手厚いかが、長期的な満足度を左右します。

まとめ

ワークフローツールは企業の生産性向上や業務標準化に欠かせない存在になりつつあります。

導入の際は、自社の業務要件や既存システムとの相性、ユーザーインターフェースの分かりやすさなど、複合的に検討することが大切です。

特に日本企業においては、稟議や回覧などの独自文化をワークフローツールにどう落とし込むかがポイントとなるでしょう。

本記事で紹介した通り、一口に「ワークフローツール」と言っても、その種類や得意分野は多岐にわたります。小規模な承認フローを即座に導入したい場合にはクラウド型のSaaSサービス、大規模かつ複雑なプロセスを徹底管理したい場合にはBPMプラットフォーム、といったように自社の状況や成長ステージに合わせて最適なソリューションを選定するのが理想です。

紙やメールに頼っていた業務プロセスをデジタル化し、透明性とスピード感を持ってビジネスを進めるためにも、ワークフローツールを積極的に活用することを検討してみてはいかがでしょうか。

適切なツールを選び、運用体制を整えることで、承認までのリードタイムを短縮し、属人的な業務からの脱却を図るだけでなく、将来的なビジネス拡大に向けた基盤作りにも役立ちます。

ぜひ自社に合った最適なワークフローツールを見つけて、より効率的で透明性の高い業務プロセスを実現してください。