【初学者向け】GitHub Copilotについて解説します

はじめに

ソフトウェア開発の現場は日々進化しており、新しいテクノロジーが次々と登場しています。

その中でも近年注目を集めているのが、GitHubとOpenAIが共同開発したAIペアプログラミングツール「GitHub Copilot」です。AIがコードの提案をしてくれるという斬新なアプローチは、開発者にとって大きな助けとなり、コードを書く過程をよりスピーディかつ効率的にする可能性を秘めています。

本記事では、GitHub Copilotの概要や導入方法、具体的な使用例、メリット・デメリットなどを詳しく解説します。記事を読み終える頃には、GitHub Copilotをどのように使いこなし、プロジェクトに導入していけばよいかが分かることでしょう。

なお、GitHubについての記事は以下を参考にしてください。

【初学者向け】GitHubについて解説します

1. GitHub Copilotとは何か?

1.1 GitHub Copilotの概要

GitHub Copilotは、OpenAIの大規模言語モデル(LLM)である「Codex」をベースとして開発されたAIペアプログラミングツールです。Microsoftが提供するVisual Studio Codeや各種JetBrains製品、Neovimなどのエディタに拡張機能として組み込むことで、リアルタイムにコード補完や関数生成、コメントに基づいたコード提案などを行います。

具体的には、以下のような特徴があります。

インテリジェントな補完機能

単なるシンタックスベースの補完ではなく、書いているコードの文脈やコメントを理解し、続きの処理や関数、クラスなどを提案してくれます。

多種多様なプログラミング言語に対応

PythonやJavaScript、TypeScript、Go、Ruby、Javaなど、多くの言語で活用可能です。Copilotが学習した知識ベースを活かし、幅広い言語でのコードサジェストを行ってくれます。

コメントドリブンのコード生成

「この関数でやりたい処理はこれ」というようなコメントを英語や日本語で書くと、それに対応したコードのスニペットを自動生成してくれます。たとえば「リストの重複要素を削除する関数を作る」とコメントすれば、それに相当する実装を提案してくれるのです。

開発スピードの向上

日常的なコーディングのルーチンワークや、APIの使い方を毎回調べる手間などを大幅に削減できます。新しいライブラリを使う際にも、Copilotの提案を通じて大枠の実装を素早く把握することが可能です。

1.2 料金やライセンス

GitHub Copilotは有料サブスクリプションとして提供されています。個人向けや企業向けのプランがあり、月額制や年額制で利用することが一般的です。現在の料金プランはGitHub公式サイトで確認できますが、個人開発者向けには手の届きやすい価格帯になっています。

なお、学生やオープンソース活動を行っている開発者に対しては、無料で使用できるプログラムが用意されている場合があります。自身が対象となるかどうかを必ず確認しておきましょう。

2. GitHub Copilotを使うための準備

2.1 GitHubアカウントの作成

まず、GitHub Copilotを利用するにはGitHubアカウントが必要です。すでにアカウントをお持ちでない場合は、GitHubの公式サイトで無料のアカウントを作成しましょう。

2.2 GitHub Copilotサブスクリプションの申し込み

GitHubアカウントを取得したら、Copilotのサブスクリプションを有効にします。以下の手順で申し込みを行います。

  1. GitHub Copilot公式ページにアクセスする
  2. 「Start your free trial」などのボタンが表示される場合は、そこからサブスクリプションページへ移動
  3. 支払いプランを選択し、クレジットカード情報などを登録

学生やオープンソース開発者の場合、特定の条件を満たすと無料プランが利用できる場合がありますので、該当する場合は公式ドキュメントを参照しましょう。

2.3 開発環境の準備

GitHub CopilotはVisual Studio CodeやJetBrains系のIDE、Neovimなど複数のエディタ/IDEに対応しています。以下に代表的なセットアップ例を示します。

Visual Studio Codeの場合

  1. Visual Studio Codeを起動
  2. 左の拡張機能パネル(Marketplace)で「GitHub Copilot」を検索
  3. 「GitHub Copilot」拡張機能をインストール
  4. VSCodeの左下、もしくはコマンドパレットからサインインして認証を行う

JetBrains IDE(IntelliJ IDEAやPyCharmなど)の場合

  1. IDEの設定画面を開く
  2. 「Plugins」から「GitHub Copilot」を検索
  3. プラグインをインストールし、再起動
  4. GitHubアカウントでサインインして認証を行う

Neovimの場合

Neovimでは外部プラグインを通じてCopilotを利用します。github/copilot.vimを利用するのが一般的で、.vimrcinit.vimで設定を行い、GitHubトークンを用いて認証する必要があります。詳細はGitHubの公式ドキュメントを参照すると良いでしょう。

3. GitHub Copilotの基本的な使い方

3.1 コード補完

GitHub Copilotの最も基本的な機能は、インテリジェントなコード補完です。コードを書いている最中に、エディタが自動的にCopilotの提案候補を表示します。

  • 提案を受け入れる場合は、タブキーやエンターキー(環境によって異なる)を押す
  • 提案を無視する場合は、そのままコードを続けて書く
  • 別の提案候補を確認したい場合は、Ctrl + ] (Windows)やAlt + ] (macOS)などのショートカットで切り替えが可能

環境によってキーバインドが異なるので、拡張機能やプラグインの設定を確認しておきましょう。

3.2 コメントからのコード生成

Copilotの大きな特徴は、コメントに書いた指示からコードを自動生成してくれる点です。たとえばPythonファイルに以下のように書いてみます。

pythonコピーする# TODO: リストから重複要素を取り除いてソートした結果を返す関数を作成する

このコメントを書いた後、エンターキーを押して空行を挟むと、Copilotが関数の候補を提案してくれます。提案内容はGitHub Copilotが学習した一般的な実装パターンに基づいており、「セットに変換して重複を除外し、ソートしてリストに戻す」などのコードが自動的に生成される可能性があります。

3.3 Docstringやテストコードの自動生成

Copilotはコード本体だけでなく、関数やクラスのDocstring、さらにユニットテストなども自動生成できます。
たとえば次のように関数のDocstringを追加したい場合は、関数宣言の直下に「"""」を入力すると、Copilotが関数の説明や引数・戻り値の情報を推測し、コメントを提案してくれることがあります。

pythonコピーするdef add_numbers(a: int, b: int) -> int:
    """

エンターキーを押してみると、Copilotが関数の名前や型ヒントなどからDocstringの候補を挿入してくれるかもしれません。

また、テストコードを作成するときにも、

pythonコピーする# TODO: 上記の関数をテストする単体テストを作成する

などとコメントを書けば、pytestやunittestの形式に沿ったテストコードを自動生成してくれる可能性があります。

4. GitHub Copilotの活用例

4.1 Web開発での使用

ReactやVue、Angularなどのフロントエンドフレームワークを使って開発している場合、コンポーネントのひな形を作るのは意外と時間がかかる作業です。Copilotを利用すれば、よく使うパターンを瞬時に生成できます。

例えばReactで関数コンポーネントを定義したいときに

jsxコピーする// TODO: UserCardコンポーネントを定義し、ユーザー情報を表示

などとコメントを書いておけば、ユーザー名や画像、プロフィールの文章などの表示部品をテンプレートとして提案してくれるでしょう。また、APIコールを行う部分やイベントハンドラなどもCopilotが提案するため、開発スピードが上がります。

4.2 バックエンドやスクリプト作成

Node.jsやPythonを使ったサーバーサイドのコードを書くときにも、ルーティングやデータベース操作などのボイラープレートコードをCopilotが提案してくれます。FlaskやFastAPI、Expressなどのフレームワークで頻出するコードブロックをすばやく生成できるので、プロトタイプを高速に作りたい場面では特に役立ちます。

また、ちょっとしたユーティリティスクリプトを作る際にも、Copilotを使えばファイル操作、HTTPリクエスト、文字列操作などの処理をスピーディに書き始められます。

4.3 新しい言語やフレームワークへの学習補助

GitHub Copilotはすでに多くのコードを学習しているため、自分がまだ詳しくない言語やフレームワークの例示的コードを簡単に見つける手段としても利用できます。コメントに「GoでHTTPサーバーを立ち上げるコード例」などと書くだけで、雛形を提案してくれます。これをきっかけに学習を進めることで、新しい技術へのキャッチアップが早くなるでしょう。

5. GitHub Copilotを使う上での注意点とベストプラクティス

5.1 提案内容の精査

Copilotの提案は万能ではありません。AIによる推測なので、もちろん間違ったコードや非効率な実装を提示することもあります。

提案を鵜呑みにせず、開発者自身がレビューして正しいかどうかを判断する必要があります。また、プロジェクト固有のコーディング規約やドメイン知識はCopilotが完璧には理解していない可能性がありますので、最終的には人間が責任を持って修正することが大切です。

5.2 セキュリティリスクへの配慮

Copilotは大規模な公開リポジトリのコードを学習していますが、特定のライセンスや機密情報が混入する可能性があります。Copilotが提案するコードの中には、意図せず著作権保護されたコード片が含まれるリスクや、セキュリティ上の問題(SQLインジェクションやXSSの脆弱性など)を誘発するような書き方が含まれている場合があります。

企業や組織で利用する際は、セキュリティおよびライセンス条項を必ず確認し、提案されたコードをしっかりレビューすることが重要です。

5.3 コード品質の担保

Copilotは非常に便利なツールですが、提案が常に最適解というわけではありません。リファクタリングやパフォーマンス最適化が必要な場面では、Copilotの結果に頼りすぎず、従来通りの人力での検証やパフォーマンステストを行いましょう。

開発チームの中で「Copilotの提案をどのように評価・採用していくか」の基準を設けると、プロジェクト全体のコード品質が保ちやすくなります。

5.4 学習データとの重複

Copilotは過去に学習したオープンソースのコードを元にサジェストを行います。ごく稀に、ライセンス上の問題があるコードがそのまま出てくる可能性も指摘されています。これについては、GitHubも対策を進めていますが、企業の機密情報やライセンスが厳しいコードベースと混同しないよう、バージョン管理やレビューを徹底しましょう。

6. GitHub Copilot導入によるメリット・デメリット

6.1 メリット

開発効率の向上

AIが自動で提案してくれるので、単純作業の繰り返しや、コード例を探すための検索時間が大幅に削減できます。

学習曲線の緩和

新しい言語やフレームワークを使う際、わざわざドキュメントを読まなくても、Copilotの提案をベースに学習を始められます。

生産性とモチベーションの向上

細かい実装上の迷いが少なくなるため、より創造的な部分に時間を割けるようになります。開発に集中できることでモチベーションも向上しやすいです。

チームでのナレッジシェア

Copilotは広く一般に公開されているリポジトリから学習しているため、豊富な事例やイディオムが提案されます。チームメンバーがCopilotの提案を通じて共通の書き方を学べる可能性があります。

6.2 デメリット

誤った提案や非効率なコード

提案されたコードが必ずしも正しいとは限らず、誤解を招きやすい実装が出てくるケースもあります。

ライセンスやセキュリティリスク

学習元コードのライセンス問題や脆弱性のあるコードの再利用が発生するリスクがゼロではありません。

過度な依存

Copilotに頼りすぎると、自分でコードを書くスキルや問題解決能力が低下する可能性も指摘されています。バランスが重要です。

インターネット接続必須

Copilotはクラウド上で動作するAIを使っているため、ネットワーク接続がないと提案が得られません。

7. まとめと今後の展望

GitHub Copilotは、AIがコードの文脈を理解しながら提案してくれる画期的なツールです。コメントドリブンのコード生成やインテリジェントな補完機能を使えば、日常のルーチンワークや新しい技術の習得にかかる時間を大幅に短縮できます。特に個人開発者や小規模チームにとっては、生産性向上に大きく寄与するでしょう。

一方で、AIの提案は必ずしも完璧ではありません。開発者がしっかりとレビューし、セキュリティリスクやライセンス問題に対して責任を持って対処する必要があります。また、過度に依存しないよう注意しつつ、Copilotの提案を上手に活用しながら、プロジェクトの品質を保つことが大切です。

今後、GitHub CopilotのエンジンであるOpenAI Codexや、それに続く新たな大規模言語モデルがさらに進化していくことが予想されます。より高精度な提案やプロジェクト全体のコンテキストを踏まえたアドバイスが可能になると、コーディングのあり方そのものが大きく変わっていくかもしれません。開発者にとっては、これらの新技術を早期に取り入れつつ、スキルアップやプロジェクト管理に活かしていく柔軟性が求められる時代になるでしょう。

ぜひGitHub Copilotを導入して、革新的なAIペアプログラミング体験をお試しください。 コードを書く作業が格段にスムーズになり、開発全体の効率化と品質向上に貢献してくれるはずです。もちろん、最終的な判断は常にあなた自身が行い、プロジェクトにとって最適なコードを生み出すことが大切です。これからのソフトウェア開発において、AIの力を借りることはスタンダードになっていく可能性が高いので、ぜひ先陣を切って新たな生産性向上の波に乗りましょう!