【解説】コンサルティングファームのマネージャーはこの6つのスキルを持っていないと生き残るのがきつい

以下は、私がコンサルティングファームのマネージャーとして部下にレクチャーするためにまとめた内容をベースに、より深く掘り下げて書いたブログ記事です。

コンサルティングという仕事は多くの人がイメージする以上に複雑かつ多忙であり、常に結果が求められます。

だからこそ、土台となる思考法や行動指針がしっかりしていなければ、クライアントの役に立つどころか、自分自身がプロジェクトの足かせになる可能性もあります。

以下に当てはまる人には是非読んでいただきたいと思います。


  • コンサルのマネージャーになりたい人
  • コンサルのマネージャーになったばかりの人
  • コンサルのマネージャーに興味がある人



1. 「ファクト(数字)」と「ロジック」で語る

私が最も重視しているのは、「ファクト(数字)」と「ロジック」で語る姿勢です。コンサルタントであれば当然のように聞こえるかもしれませんが、実際にこれを徹底できている人はそれほど多くありません。なぜなら、ファクトを基に語るためには、日々の業務をこなしながらもリサーチやヒアリングの時間を確保し、前提知識をコツコツと積み上げる必要があるからです。

1.1 リサーチやヒアリングの重要性

コンサルティングファームの仕事は常に忙しく、プロジェクトによっては「明日までに分析結果を出してほしい」といったタイトなスケジュールで動くことも日常茶飯事です。そのため、じっくりとリサーチをする時間が限られがちです。しかし、ここを怠ってしまうと、数字に基づかない曖昧な議論になってしまい、クライアントにとっても「信頼できないコンサルタント」というレッテルを貼られる恐れがあります。実際の現場の声を聞き、データを正確に収集し、そこから得られるファクトをもとに議論を組み立てる。このプロセスが欠けるとロジックは説得力を持ちません。

1.2 教養としての「理論」や「フレームワーク」

また、ファクトを武器にするだけでなく、「理論」や「フレームワーク」といった教養を身につけておくことも重要です。なぜなら、複雑な問題に直面したときに、これらを適切に引き出して当てはめることで筋道だった解を提示できるからです。新しいフレームワークや過去に学んだ理論を結びつけることで、問題解決の切り口を増やすことができます。さらに、理論やフレームワークを使い慣れていると、クライアントの役員クラスに対しても説得力のあるプレゼンテーションを行いやすくなります。「なぜこの施策が効果的なのか」「どのように成果を測るのか」を論理的に説明できれば、クライアントは「このコンサルタントは信頼できる」と考えてくれます。


2. 「仮説思考」をもってプロジェクトを前に進める

コンサルタントは、定常業務ではなくプロジェクト業務が中心です。決められた手順で行う仕事ではなく、未知の問題に直面して自ら道を切り開きながら進めていくケースがほとんど。そのため、「仮説思考」を身につけることが必須となります。

2.1 仮説思考とは

「仮説思考」とは、一言でいえば「こうなるのではないか」と予測し、実際に行動し、結果を検証しながら軌道修正していく思考プロセスのことです。たとえば恋人へのプレゼントを考える例でいえば、「高級ブランド品をあげれば喜んでくれるのでは?」という仮説を立て、実際にプレゼントしてみて、その反応から次のアクションを決めるという流れです。コンサルの世界でも、「このデータを分析すればクライアントの課題が見えてくるはずだ」という仮説を立てて検証を進め、必要に応じて方向修正します。こうしたアプローチができるかどうかで、プロジェクト全体のスピード感や結果の質が大きく変わります。

2.2 主体性(オーナーシップ)をもって仮説を検証する

また、仮説思考には「主体性」も欠かせません。上司やクライアントから指示を待つだけでは、プロジェクトは前進しません。特にマネージャークラスであれば、チームメンバーに対して仮説を投げかけ、方向性を示し、必要なリサーチや分析を割り振り、全体を推進していく役割を担います。仮説を立てたら、それをチームやクライアントにぶつけ、フィードバックを得ることで、より精緻な仮説へとブラッシュアップする。こうしたサイクルを回し続けることが、コンサルタントとしての真価を発揮するポイントです。


3. 「主体性(オーナーシップ)」をもって周りを巻き込む

コンサルティングの現場では、一人の力で完結する仕事はごくわずかです。むしろ、クライアントやチームメンバー、時には他のコンサルティングファームやシステムベンダーなど、多様なステークホルダーを巻き込みながらプロジェクトを進めることが求められます。そのためには「主体性」が大切です。

3.1 主体性の定義

ここでいう主体性とは、単に「自分の意見を言う」ということにとどまりません。プロジェクトのゴールを明確に意識し、足りない部分や遅れが生じている部分を察知して、率先してサポートしたり、追加で分析を行ったり、関係者に助言を求めたりする行動力を指します。問題が起きたときに他人任せにするのではなく、「どうすれば解決できるか」を自ら考え、先回りして手を打つのです。

3.2 周りを巻き込むコツ

主体的に動くだけではなく、周りを巻き込む力も必要です。そのためには、プロジェクトの全体像を常に共有し、今どの工程にいて、何がネックになっているのかを可視化することが大切です。時にはチームメンバーやクライアントに対して「現状このリスクがありますが、何か策を考えましょう」と提案し、意見を引き出すこともマネージャーの大事な役割となります。こうしたコミュニケーションを繰り返すことで、全員が共通の目標と問題意識を持ち、相互に協力しやすい環境が生まれます。


4. 過去、現在、未来を可視化する

コンサルの現場では、時間軸の観点を意識して議論することも重要です。プロジェクトは常に過去のデータや実績、現在の状況、そして未来の計画を行き来しながら進めます。

4.1 過去(背景)の分析

まず、過去のデータを分析することで、クライアントのビジネスや組織にどのような傾向や問題が潜んでいるかを洗い出します。たとえば売上推移やコスト構造、人事データ、顧客満足度など、さまざまな観点から現状を客観的に把握することがスタート地点となります。

4.2 現在(AsIs)の把握

次に、現在の状況をできるだけ具体的かつ定量的に把握します。ここで欠かせないのがヒアリングです。現場の担当者や各部署のキーマンに話を聞くことで、実際に何が起きているのか、どのような課題感があるのかを把握できます。資料や数字だけでは見えてこない事実やボトルネックを見つけることができるでしょう。

4.3 未来(ToBe)を描く

そして、最も重要なのが未来の姿を具体的に描き、そこに至るまでのロードマップを示すことです。どんな施策をいつ、どのように実施していくのか。その結果として得られるインパクトは何か。これを具体的に示すことで、クライアントは「このコンサルタントに任せれば成功へ導いてくれる」と安心します。逆に、ゴールが曖昧なままだと、コンサルタントに支払う費用対効果に対して疑問を持たれてしまいます。


5. クライアントの課題を設定し、課題解決にフォーカスする

コンサルタントの最大のミッションは、クライアントの課題解決です。しかし、当のクライアント自身が自社の課題を正確につかめていないことも多々あります。そこにこそ、コンサルタントとしての腕の見せどころがあります。

5.1 課題を正しく設定する

課題設定は非常に重要です。たとえば売上不振が問題だといっても、その原因は製品ラインアップにあるのか、マーケティング施策にあるのか、価格戦略にあるのか、人員不足にあるのかでアプローチは全く異なります。クライアントが「売上が下がっているので広告予算を増やしたい」と言ってきても、それが本当に正解とは限りません。ここでコンサルタントは、過去のデータから仮説を立てて、売上不振の真のボトルネックを突き止める必要があります。

5.2 課題解決を優先するマインド

課題解決を優先する姿勢は、コンサルタントのあり方そのものです。時にはクライアント企業の組織政治や人間関係に配慮する必要がありますが、それでも最終的に求められているのは「クライアントにメリットをもたらす成果」です。単に美しいパワーポイントの資料を作成するだけではなく、実際にクライアントにとって意味のある解決策を導き出し、それを実行に移すところまで伴走するのが理想的なコンサルタントの姿と言えます。


6. 良い人を見極め、仲間にする

最後に、コンサルタントのキャリアを重ねるうえで非常に重要になるのが「良い人を見極める力」です。ここでいう「良い人」とは、単に性格が良いということではなく、仕事に対して真摯で、チームの成果に貢献できる人という意味合いです。

6.1 人を見極めるポイント

  • 仕事に対して責任感があるか
    タスクの締め切りや品質に対して責任を持ち、最後までやりきろうとする姿勢があるかどうか。
  • 周囲への配慮や思いやりがあるか
    チームとして働く以上、自分の成果だけでなく、周囲との協調性やサポート意識も大切です。
  • 学習意欲や成長意欲があるか
    コンサル業界は変化が激しく、常に新しい知識やスキルを身につける必要があります。自ら学び、成長しようとする人はプロジェクトにも良い刺激を与えます。

6.2 仲間にする方法

良い人材を見極めたら、次はどう仲間にするか。もしマネージャークラスであれば、人材のアサインや評価に関わる機会があるでしょう。その際に、具体的な成長プランを提示し、魅力的なキャリアパスを描いてあげることが大切です。「このマネージャーの下で働けば成長できる」「このプロジェクトに参加すれば自分の価値が高まる」と思ってもらえれば、人は自然と集まってきます。反対に、不透明な指示や不十分なフォローしかできなければ、いくら才能があっても人は離れていきます。


まとめ

コンサルティングファームのマネージャーとして求められるスタンスは、一朝一夕で身につくものではありません。常に「ファクトとロジック」で議論し、「仮説思考」でプロジェクトを前に進め、「主体性」を持って周りを巻き込みながら、過去・現在・未来を可視化してクライアントの課題解決に集中する。そして、良い人材を見極め、共に成果を出す環境を作り上げる。これらは一つ一つを見ると地味に感じるかもしれませんが、実践し続けることでコンサルタントとしての真の力が養われ、クライアントからの信頼も獲得できます。

忙しい現場でこそ、これらの基本的なスタンスを意識的に徹底していくことで差がつきます。逆に言えば、これらをないがしろにすると、どんなに頭が切れようが、どんなに華やかなプレゼン資料を作ろうが、クライアントの満足を得ることは難しいでしょう。コンサルはあくまで「クライアントの課題を解決すること」が最重要ミッションであり、そのための手段としてファクトやロジック、仮説思考が存在し、周囲を巻き込む力が必要とされるのです。

もしあなたがコンサルタントのマネージャーを目指しているのであれば、まずは自分自身の行動を振り返ってみてください。普段のプロジェクトで、どれだけの時間をリサーチやヒアリングに割き、どれだけ実際の数字を使って議論しているか。仮説を迅速に立てて検証し、プロジェクトを前進させるサイクルを回せているか。チームメンバーやクライアントをしっかりと巻き込み、彼らの意見を尊重しながら最善策を導けているか。そういった点を意識し、足りない部分を補っていくことが、最終的には大きな成果につながります。

コンサルタントの世界は競争が激しく、日々新しい課題が生まれます。しかし、それを乗り越えるうえで大事なのは派手なパフォーマンスよりも、今回挙げたような基本的かつ本質的なスタンスです。ぜひ、これらを参考に自分の仕事スタイルを磨き上げ、クライアントからもチームからも信頼されるコンサルタントを目指してください。そうすれば、マネージャーという肩書きを超えた「真のリーダー」としての道が、自然と開けていくはずです。


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